① 耕種作物
2007 年から2008 年にかけての耕種作物の価格の急激な高騰は収束するが、とうもろこしの国際価格については、アジア、アフリカ等での人口の増加、新興経済国における畜産物消費の拡大を背景とした飼料用需要の増加に、バイオ燃料原料用需要の増大の影響もあって、2009年以降は、2006 年以前に比べて高い水準で、なおかつ、上昇基調で推移すると見込まれる。
また、とうもろこしの国際価格の上昇の影響で、小麦、米、大豆の国際価格も強含みで推移すると見込まれる。
② 畜産物
畜産物の国際価格は、品目によって上昇率が異なるものの、アジア、アフリカ等での人口の増加、新興経済国における食料消費の質の変化に伴う畜産物消費の拡大や飼料の国際価格の上昇の影響により、上昇基調で推移すると見込まれる。
③ 乳製品
バター、脱脂粉乳、チーズ等の乳製品についても、人口増加や新興経済国の経済成長により、需要が増加し、国際価格が上昇基調で推移すると見込まれる。
丸紅経済研究所の柴田明夫氏は、こうした世界的な食糧需給の見通しについて、
「食糧市場については、量と価格の均衡点が変化しているとみている。
背景には、世界の食糧在庫の減少があり、その背後には中国の存在がある。
世界の食糧供給量40数億トンのうち、その半分近くを米、小麦、トウモロコシ、大豆という特定の作物が占め、これにイモ類を加えると半分以上となる。
これを主要食糧の生産性が高いとみるか、供給構図が単純で脆弱とみるかである。
食物の多様性という見方からすれば、かなり脆弱化している印象を受ける。
現在、食糧は再生可能な資源だが、次第に有限資源的な性格を帯びてくると考えられる。
食糧需給の長期的な見通しには、需要が増加して価格が上昇すれば、それにともなって供給も増加し、結果として需給が一致するという楽観的なものが多いが、私は、需要は増加するが、供給はなかなか増加せずに、需給ひっ迫の傾向が強まるとみている。
これまでは灌漑を整備して大量の水と品種改良を行った高収量品種を投入し、農薬と肥料を多投して、さらに機械化することによって単収の上昇を達成してきたが、こうしたことは今後、難しくなってくる。
先進国の農業と途上国の農業には生産性に大きな開きがあるので、途上国の農業に投入を増やせば単収は上がるが、技術的に生産が可能な数量と採算を考えた場合にはなかなか難しい。
灌漑を整備して単収を上げていくことが難しいとなれば、需要は過渡期のものであるがゆえに一気に伸びて需給がひっ迫することになりかねない。」
と、世界の食料需給の長期的な見通しには、需給がひっ迫する傾向が強まると述べています。
我が国の食料自給率は、長期的に低下傾向で推移しています。
主要先進国のなかでみると、我が国の食料自給率(供給熱量ベース)は最低の水準にあります。
食料自給率(供給熱量ベース)の長期的な低下は、国内で自給可能な米の消費量が減少する一方、国内生産では供給困難なとうもろこし等の飼料穀物の必要な畜産物や、油糧原料(大豆、な
たね)を使用する油脂類の消費が増加するなど、食生活の変化が影響しています。
農林水産省「2007年食糧・農業・農村白書」では、食料自給率低下の要因として考えられる項目は、以下の通りとしています。
① 食の外部化の進展とともに食料品等の輸入が増加
食の外部化が進展するなかで、外食・中食や食品加工業等の実需者における加工・業務用需要の高まりに、国内生産が十分に対応できていなかったことも、食料自給率の低下に影響していると考えられる。
また、生鮮食料品以外にも多くの加工食品が我が国に輸入されており、これらを含めた食料品等の輸入額は2005 年には5兆5千億円と、国内の農業・漁業生産額の半分に相当する額が輸入されるまでになっている。
② 海外現地法人からの輸入が増加
農産物輸入が増加した1985 年ごろから食品産業、農林水産業での海外直接投資が増加している。海外現地法人は現地や第三国での販売に加え、我が国向けの輸出も行っており、開発輸入品として我が国に輸出される食料品が増加している。
③ 飼料自給率の低下が畜産物の自給率低下にも影響
食生活の変化に伴う畜産物の需要拡大により、畜産物の国内生産も大幅に増加したが、餌となる濃厚飼料の需要も大幅に増加した。
しかし、国土条件の制約等からその多くを輸入に依存したため、特に1965 年からの10 年間で飼料自給率は大きく低下しており、同時期の畜産物の自給率(供給熱量ベース)の低下にも影響している。
これは、輸入飼料により生産された畜産物は自給しているといえないため、畜産物自体は国内産であっても計算上、国産熱量には算入しないことになっているためである。
◆食料自給率向上に向けた取り組み~食料の安定供給の基本「国内生産の増大」~
食料自給率は国内の農業生産の状況だけでなく、食料消費のあり方にも左右されます。
このため、食料・農業・農村基本計画において、食料消費と農業生産の両面にわたる国民参加型の指針として、食料として国民に供給される熱量の5 割以上を国産で賄うことを目指しつつ、当面の実現性を考慮して、2015 年の食料自給率目標として供給熱量ベースで45%、生産額ベースで76%とする目標が設定され、関係者が一体となった取組が推進されています。
具体的には、食料自給率の向上に向けて、食料自給率に大きく影響すると考えられる米、飼料作物、油脂類、野菜の4つの重点品目に着目し、集中的に実施すべき追加的な取組として、
① 米粉利用の推進を含む米の消費拡大
② 飼料自給率の向上
③ 油脂類の過剰摂取の抑制等
④ 加工・業務用需要に対応した野菜の生産拡大
⑤ 食育の一層の推進
⑥ 国民運動を展開するための戦略的広報の推進
の6つを集中重点事項と位置付け、生産・消費の両面から国民運動として取組を強化するとしています。
1980 年ごろの我が国は、米を中心に栄養バランスに優れた「日本型食生活」が実現しており、現在に比べ脂質の熱量比率が低く、炭水化物の比率が高くなっており食料自給率(供給熱量ベース)は、52~54%と現在より高くなっていました。
このようなことから、米の消費拡大、油脂類の過剰摂取の抑制等につなげるための取組みが必要となっています。
現在、朝食欠食率の高い若年層を主な対象に、量販店、食品製造業者等と連携し、テレビCMやWEB 等を活用した「めざましごはんキャンペーン」等の広告活動が実施されています。
また、米飯学校給食の週3回の早期実現に向けた働きかけの強化、米粉パン、米粉麺等の米加工品の普及・啓発に向けた取組、油脂類の使用を節約できる業務用フライヤーの普及のほか、食育の一環として「日本型食生活」の実践の促進等の取組も行われています。
飼料自給率の向上については、輸入飼料に依存した畜産から国産飼料に立脚した畜産へ転換することが重要とされています。
このため、とうもろこし等高栄養な飼料作物の作付拡大や、耕畜連携による稲発酵粗飼料の作付拡大、多様な土地を利用した放牧の推進といった国産飼料の生産拡大に向けた取組や、食品残さの飼料化(エコフィード)や飼料用米の活用の推進が行われています。
野菜の生産拡大については、加工・業務用需要に対応した新たなモデル産地の形成を促進するとともに、加工・業務用野菜の生産に取り組む産地の共同利用施設の整備をはじめ、生産拡大に取り組む産地への重点的支援が図られています。
また、食品産業と産地との連携強化を図るため、例えば「加工・業務用産地と実需者との交流会」を開催するなど、食品産業事業者と生産者とのマッチングが図られています。
さらに、実需者と生産者とをコーディネートしていく人材を育成するための研修も開催されています。
食料自給率に関する広報については、世界の食料事情や我が国の食料の約6割を海外に依存している状況等を知らせ、食料自給率向上への関心が高まるような情報を発信していくことが重要としています。
食料の安定供給を確保していくためには、国内生産の増大を基本として、これと輸入、備蓄とを適切に組み合わせていくことも重要です。
総合研究開発機構(NIRA) 伊藤元重氏は、広い視点から考えることが重要であるとして
「世界的に食料価格が高騰する中で、日本の食料自給率が非常に低いことが注目されている。
食料問題に国民の関心が集まるのは結構なことだが、『食料の安全保障を確保するために、海外からの輸入を制限し、国内の農家を支援しなくてはいけない』というような短絡的な議論に陥ってはいけない。
日本の食料を確保するためには、国内だけで対応することが不可能であることは言うまでもない。」
と、輸入との適切なバランスが大切であることを指摘しています。
このような状況を踏まえながら、国産の農産物を消費することは、食料自給率の向上だけでなく、健康、地域、環境の面からも望ましいといえます。
限られた国内農地を有効に活用して、国内農産物の生産を増やすとともに、これを食品産業や消費者が積極的に利用するなど、食料の生産・消費両面にわたる課題に、国や地方公共団体だけでなく、農業者、食品関連事業者、消費者がそれぞれできることから長続きする形で一体的に取り組む必要があります。
また、食料の安定供給や消費者の健康保護には、「食の安全」を確保する取組が重要であり、これに加えて、食品表示の適正化等消費者の信頼を確保するための取組を実施することにより、消費者にとって安心できる食生活の実現につながっていくといえます。
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