内閣府が5月20日発表した09年1~3月期の国内総生産(GDP)速報によると、物価変動の影響を除いた実質GDP(季節調整値)は、前期比4.0%減、年率換算で15.2%減となり、戦後最悪のマイナス成長となっています。
また、08年10~12月期の実質成長率も3.8%減、年率換算で14.4%減に下方修正されたため、第1次石油ショック時の74年1~3月期(年率13.1%減)を2四半期連続で下回っています。
日本の成長率は、米国(年率6.1%減)や、ドイツ(同14.4%減)などを下回り、先進国では最低となっています。
中小企業白書は、中小企業基本法第11条の規定に基づき、国内中小企業の動向等に関する報告書として閣議決定し、国会に提出するものです。
2009年版白書は今年4月24日に閣議決定し、国会に提出されています。
◆中小企業白書2009年版のポイント
第1章2008年度における中小企業を巡る経済金融情勢
(1) 世界的な金融危機が発生し、世界経済が減速する中、輸出産業の減産が中小製造業の受注の大幅な減少をもたらすなど、中小企業の業況や資金繰りが、急速・大幅に悪化。
(2) こうした急激な中小企業の経営環境の悪化に対し、政府は、30兆円規模の資金繰り対策、下請取引の適正化等、中小企業への支援策の拡充・実施に注力。今後とも積極的な支援が必要。
第2章中小企業による市場の創造と開拓
かつてない内外需の減少の中で、変化しつつある市場ニーズを把握し直し、中小企業ならではの知恵と工夫を活かした製品・サービスの開発等(イノベーション)に取り組んでいくための現状と課題を分析。
(1) 中小企業のイノベーションの特徴
中小企業にとってイノベーションは、研究開発活動による技術革新だけでなく、創意工夫、生産方法の改善等、自らの事業の進歩を実現することを広く包含。その特徴は、経営者のリーダーシップの発揮であり、中小企業の強みを活かしたイノベーションの実現が重要。
(2) 販路の開拓に向けた取組
顧客のニーズを把握するためのモノ作りとサービスの融合、農商工連携、IT活用による顧客開拓、海外市場の開拓等を通じた、販路開拓が重要。
(3) イノベーションを支える経営資源(知的財産、人材、資金)
中小企業による知的財産の戦略的な保護・活用、技術・技能の承継等による人材育成、各分野の専門人材との連携等による金融機関の目利き能力の向上等が必要。
第3章中小企業の雇用動向と人材の確保・育成
雇用情勢が悪化する中、中小企業で働く人材を巡る実態を示し、人材の確保・育成に向けた課題を分析。
(1) 雇用の現状とミスマッチの状況
中小企業全体の雇用過剰感は高まっているが、引き続き不足感のある中小企業もあり、中長期的に見て最も重要な経営資源である人材の確保に向け業種を超えた人材の橋渡しが必要
(2) 仕事のやりがい等と人材育成
大企業と中小企業で仕事のやりがいにほとんど差はない。中小企業は、小さい組織を活かし、経営者と従業員のコミュニケーションを高めることにより、従業員の意欲と能力を向上させていくことが重要。
第1章 2008年度における中小企業を巡る経済金融情勢
1.世界的な金融危機と我が国経済情勢の悪化
・米国発の世界的な金融危機が発生。2007年夏のサブプライム住宅ローン問題の発生以降下落し始めていた世界各国株価は、2008年夏のリーマン・ョックを契機に、日本の株価を含め大幅に下落。世界経済は急速に減速。
・我が国経済は、海外経済の減速により、輸出が大幅に減少。2008年10月から4ヶ月連続で貿易収支が赤字。実質GDPは3四半期連続のマイナス成長となり、特に2008年10-12月期は前期比▲3.2%(年率▲12.1%)と第一次石油危機以来の急減を記録。
・景気が急速に悪化する中で多数の非正規労働者の雇止め等が生じるなど雇用情勢も急速に悪化。
2.中小企業の景気動向
・世界経済の減速に伴う輸出の急速な減少など経済環境が厳しさを増し、中小企業の業況感は急速に悪化。中小製造業の在庫が増加し、生産がかつてなく急速に減少。
・これまで、中小企業の中で比較的業況の良かった加工組立型の製造業の業況が、他の業種に増して急速に悪化。
・地域別の中小企業の業況をみても、業種構成で製造業の比重が大きく、かつ、これまで他地域より相対的に業況の良かった関東、中部、近畿が2008年後半以降急激に悪化し、他地域と同程度から更に悪い状況。
・中小企業の経常利益は、2007年末から前年同期比で減少傾向にあったが、売上高の減少を受けて2008年7-9月期以降大きく減少。
・昨年前半まで収益環境を大きく圧迫した原油・原材料価格の上昇は、価格転嫁が難しい下請企業をはじめ中小企業にしわ寄せが及んだ。収益環境の悪化は仕入価格の服感からやや緩和しているが景気の急速な悪化による売上単価の下落圧力は高まっており、収益環境は依然として厳しい。
・輸出減少に伴う大手製造業者の減産を受け、特に下請中小企業(製造業)の業況感は急速に悪化。
・中小製造業者は、製品をそのまま輸出するよりも、製品を加工組立業者に納入し、それが輸出される場合が多い。特に自動車等の輸送機械製造業では、その傾向が強い。
・自動車など輸出企業の急速な減産が、中小企業に対して取引数量の減少と取引単価の低下を惹起。とりわけ、今後、取引単価の下落を見込む中小企業は、足下で取引単価が下落している中小企業よりも多い。
・ 北米地域の景気の悪影響を見込む中小企業が多いが、「やや悪影響」を含めると、アジア地域の景気の悪影響を見込む中小企業も多い。
3.中小企業金融の動向
・景気の急速な悪化に伴い、中小企業の資金繰りは一段と厳しさを増しており、中小企業の倒産件数の前年同月比も、2008年後半に入って増勢を強めている。
・中小企業向けの貸出残高は、2007年後半から再び減少に転じた。中小企業の長期資金・短期資金の借入難易度も悪化。
・中小企業は設備資金の借入金を減少させる一方、売上減少に伴う資金不足を補うため、運転資金の借入金は増加させている。また、地価等の下落に伴って担保力も低下しており、中小企業の資金調達環境は厳しさを増している。
・金融機関は、1年前に比べて新規貸出や貸出条件の変更に対する姿勢をやや積極化させていると認識しているところが最も多いが、中小企業は金融機関の貸出姿勢が不変、あるいは慎重化していると認識している者が多く、認識のギャップがある。
・売上減少に直面する中小企業は事業基盤の再構築等に取り組む必要があり、金融機関は、中小企業への円滑な資金供給に一層積極的な役割を果たしていくことが期待される。
・中小企業の資金繰りの悪化を踏まえ、政府は、信用保証協会の緊急保証の導入、日本政策金融公庫のセーフティネット貸付の拡充等を行い、それらの実績は大幅に増加。
・緊急保証は、業況の厳しい建設業、製造業で特に多く利用されている。
第2章中小企業による市場の創造と開拓
1.中小企業のイノベーション
(1) 中小企業にとってのイノベーションの重要性
・中小企業が売上の維持・拡大を図るためには市場環境の変化に対応し、製品・サービスの開発等に不断に取り組むことが重要と考えられる。実際、新製品の割合が一定程度高い中小企業は、売上高が増加している企業が多い傾向。
・イノベーション実現のための要素の一つで、経年的なデータがある、研究開発費(新技術の開発だけではなく製品の改良等も含む。)で見ると、研究開発費が大きい中小企業は、景気の拡張期、後退期ともに利益率が高い傾向。また、過去の景気後退局面でも、中小企業の研究開発費の売上高比率は低下しておらず、厳しい状況下でも、将来を見据えた研究開発活動に努力している姿がうかがえる。
(2) 中小企業のイノベーションの特徴
・中小企業にとってのイノベーションは、研究開発を通じた技術革新だけでなく、創意工夫、ひらめき等をきっかけとした新たな製品・サービスの開発、生産方法の改善、販路の開拓など、自らの事業の進歩を実現することを広く包含。
・日頃からビジネスの種を探したり、生産工程の改善や経営資源の有効活用を考える中で生まれたアイディアや創意工夫が、イノベーションのきっかけとなった事例も多い。
・中小企業がイノベーション実現のために重視して行っている取組については、大企業と比べると、経営者のチャレンジ精神、創意工夫、素早い意思決定など、経営者のリーダーシップが重視されているのが特徴。
・中小企業はニッチな市場でイノベーションの担い手として活躍している傾向がある。
(3) イノベーションが活発な分野での中小企業の役割
・環境、バイオ、IT、医療・福祉等の成長分野でも、中小企業の役割は重要。
・中小企業の設備面の省エネ対応(プロセス・イノベーション)は、資金不足のために十分行われていない。国内CDMの推進等による省エネ対応の促進が期待される。
(4) 中小企業の強みと収益力
中小企業は、その強みを「経営者と社員との連帯感」、「個別ニーズにきめ細かく応じる柔軟な対応力」、「経営における迅速かつ大胆な意思決定能力」等と認識。
・実際、中小企業の上位12%の利益率は、大企業の上位12%の利益率を上回る。中小企業は強みを活かすことを通じて高いパフォーマンスをあげることができる潜在力を有する。
2.イノベーション実現に向けたニーズの把握と市場の開拓
(1) 新たな製品等のニーズ把握の重要性
・中小企業は、新たな製品・サービスや技術に関するアイディアや発想の源泉として、自社の技術シーズよりも顧客のニーズを重視している。
・革新的なアイディアや発想を得るため、中小企業は販売先との連携を重視している。
(2) モノ作りとサービスの連携の重要性
・顧客ニーズの把握のため、中小製造業者がサービス分野(小売・卸売・サービス業)への参入を通じて多角化戦略をとる動きも見られる。
・サービス分野へ参入する理由としては、「事業の多角化の一環」という理由に次いで、「自ら顧客へ販売する手段を持つ」という理由が多く、また、販売手段の獲得やニーズの汲み上げを目的として参入した企業はヒット商品を生む傾向。
(3) 農商工連携の重要性
・食料品製造業を営む中小企業のうち、サービス分野へ参入している企業は、中小企業全体の平均よりも多い。参入の理由も「自ら顧客へ販売する手段を持つ」が多い。
・食料品製造業を営む中小企業は、農商工連携に向けて、農林水産業者との連携の目的として、「地域ブランドの形成」、「原材料の確保」のほか、「トレーサビリティのげ安全費確保実現」を掲ており、食のや消者の信頼のへの対応も意識されている。
・農商工連携の取組は、地元の農産品を有効活用したものから、製造業者の技術の活用等、農林水産関連の事業モデルを革新する本格的なものまで幅広いが、食の安全等を含めた消費者ニーズに的確に対応するための取組が重要である。
(4) ITの活用による顧客開拓の重要性
・中小企業が取引先を拡大させていく手段として、ITの活用も重要。実際、電子商取引のメリットとして、「取引コストの削減」を挙げる中小企業が最も多いが、次に「新たな顧客の開拓」が多く、従業員規模が小さい企業ほど多くなる。
(5) 海外市場の開拓の現状と課題
・中小企業による海外展開は、2001年から2006年にかけて2割増加して7,551社に達している。海外進出の目的は、コストダウンが最も多いが、現地における市場開拓・販売促進を目的としたものも多い。
・主として中小企業が製造している製品の輸出はアジア向けが多い。減速しつつも、なお成長を続けるアジア市場を含め、海外市場の開拓は中小企業にとって重要。
・中小企業が直接輸出(自らの名義で通関手続きを行ったもの)を行う理由は、ニーズや情報を直接把握でき、フィードバックを期待できることにある。現在、外需が減少している中、海外市場で売れる商品を作っていくためには、変化しているニーズの把握が一層重要となっており、中小企業が直接輸出を行うことへの支援も重要。
・中小企業は、関税の引き下げ、模造品取締りなどの知的財産権保護強化等が海外市場の開拓等にとって有効と考えている。こうした措置を含め、中小企業が海外市場の開拓に積極的に取り組むことができる環境の整備が重要。
3.イノベーションを支える経営資源を巡る現状と課題
(1) 知的資産の保護・活用の現状と課題
・中小企業は、特許出願に対して「特に方針を定めていない」としている企業が多いが、中小企業も、知的財産の創出・保護・活用への戦略的取組が重要と考えられる。
・また、中小企業は大企業に比べて特許出願を絞り、営業秘密とする傾向がある。その理由として、技術流出につながる恐れがあることのほか、コスト負担の大きさを中小企業は挙げている。
・売上・収益の向上につながった商品(ヒット商品)を有する中小企業は、特許権の早期取得が業績の向上に大いにつながったと考える企業が多い。模造品の排除のみならず、信用力の獲得や顧客開拓などの効果も見据えた、戦略的な対応が重要。
・中小企業は技術移転に対して関心のない企業が多いが、大学、試験研究機関、大企業からの技術移転に関心を持つ企業も2割存在。
・実際、TLOからの技術移転先は中小企業が約半分を占める。いわゆるオープンイノベーションに向けて中小企業による積極的な取組も期待される。
・中小企業は知的財産の保護活用を戦略的に行っていく上での課題として知的財産に係る専門知識の不足、人材・資金の不足、権利侵害をめぐる係争への対応等を挙げており、こうした課題の取組への支援も求められる。
(2) イノベーションを生み出す人材の現状と課題
・中小企業は、技術・技能人材に求められる知識・能力として、顧客ニーズを的確に把握し、製品設計化する能力や革新的技術を創造していく能力の重要性が高まっていると考えている。
・アイディアをひらめき、イノベーションを生み出す人材(イノベーション人材)を育成していくための取組として、上司あるいは先輩の指導による技術・技能の承継を挙げる中小企業が最も多い。いわば「温故知新」が重要と考えられる。
・実際技術・技能の承継を的確に行ったとする企業は技術革新に成功したとするところが多い。
・技術・技能承継に加え、セミナーや講習会等への参加など、アイディアを生み出すために外部の知識や情報に触れ、採り入れる取組も重要。
(3) 研究開発に要する資金の調達を巡る現状と課題
・中小企業のライフステージ毎の課題を見ると、成長初期の中小企業は資金調達の確保を最大の課題として挙げている。
・研究開発に取り組む成長初期の中小企業の約4割が希望通りに資金調達を行えていない。金融機関やベンチャーキャピタル等からの資金調達への期待が大きいものの、希望通りにいかず、代表者を含めた役員自らが出資等を行い、資金調達を行っていると推測される。
・成長初期において資金調達ができず、事業を縮小した企業は3割、事業自体を断念した企業も1割にも達する。
・新たな事業に対し、金融機関が円滑に資金供給を行うためには、金融機関の目利き能力が重要。金融機関の目利き能力について、10年前と比較して「やや向上した」と評価する金融機関が多い一方、中小企業は「ほとんど変わらない」とする者も多い。
・目利き能力が向上しない原因としては、金融機関職員の事業に関する知識の低下、金融機関のリストラに伴う職員数の減少が多く挙げられている。
・金融機関は目利き能力の向上のための課題として、職員の研修・能力開発支援や各事業分野に詳しい人材がいる業界団体との連携外部評価機関との連携に取り組むことを挙げており、こうした連携を促進していくことが重要。
第3章中小企業の雇用動向と人材の確保・育成
1.雇用動向と中小企業で働く人材の現状
(1) 中小企業の足下の雇用動向
・中小企業の雇用過不足感については、2009年1-3月期に過剰超幅が急速に拡大。特に製造業、卸売業で過剰感が強い。
・こうした厳しい雇用情勢の中でも、雇用不足感のある企業は一定程度存在。雇用過剰感が高まる一方で、ミスマッチは依然として存在。
・いずれの業種でも、過剰を見込む中小企業と不足を見込む中小企業が存在。過剰を見込む中小企業が多い業種は製造業等である一方、不足を見込む中小企業が多い業種は、医療・福祉、生活関連サービス・娯楽業等、飲食サービス業等。
・職種別に有効求人数と有効求職者数を見ると、技術者や医療福祉関係の専門的な職種が不足する一方、一般事務などの職種で過剰となっており、こうしたミスマッチの解消に向けた取組が必要。
・また、大卒の求人倍率は、中小企業は常に1.0倍を上回っており、大企業との間でミスマッチが生じている。現在、大企業が採用抑制をする中、優秀な人材を確保できる好機とする中小企業もある。
(2) 中長期的な雇用動向
・中小企業は人材が最も重要な経営資源と考えており、中長期的には労働力人口の減少が予想される中、将来を見据えた人材確保・育成戦略が求められている。
(3) 中小企業で働く人材の現状と離職率
・中小企業の雇用形態は、大企業に比べて非正規社員の割合が高いが、派遣労働者はやや少なく、パート・アルバイトが多いという特徴がある。
・2002年から2007年にかけての変化を見ると、中小企業の正社員の比率が低下しているが、大企業の低下に比べると低下幅は小さい。
・正社員を含む一般労働者の離職率(平成19年)は年間12.2%。特に新卒採用者に関しては、従業員規模の小さな企業ほど、直近10年間で正社員として採用した新卒者について、現在も働いている割合が9割以上の企業と1割未満の企業に二極化。
・中小企業が人材育成の効果を確保していく観点からは、従業員の仕事への意欲(やりがい)を高めること等による離職の抑制に取り組むことも重要。
(4) 中小企業で働く人材の採用経路と人材橋渡しの重要性
・中小企業の正社員は、新卒者よりも、中途採用(他社の正社員や非正規社員からの転職)が多い傾向。また、異業種間でも中小企業への人材の移動が多く行われている。
・こうした人材の橋渡しを支援するハローワーク、商工会議所・商工会等の積極的な取組が期待される
(5) 大学、高等学校等の教育機関との連携の現状と課題
・新卒に関しては、中小企業と教育機関の連携も重要。教育機関は、インターンシップ等を通じた中小企業との交流が大企業との交流以上に必要と考えている。
・従業員へのアンケート調査によると、就職先として「大企業に就職したかった」という回答も多いが、「企業規模にはこだわらなかった」との回答が最も多い。情報発信やインターンシップ等を通じて学生の中小企業への理解を深めることが重要。
・インターンシップを実施している学校が増加しているものの、中小企業が提供しているインターンシップの期間が、教育機関が理想的と考える期間に比べて短い等のギャップが見られ、その充実に向けた取組が望まれる。
2.中小企業の賃金と仕事のやりがい
(1) 中小企業の賃金の現状
・中小企業の正社員の賃金水準の平均値(29.8万円)は大企業の平均値(38.3万円)よりも低い。しかし、それは平均の比較であり、大企業の平均賃金を上回る中小企業も2割存在。
・全体として見れば、労働生産性の水準と賃金水準は相関するが、正社員の年齢階層ごとの賃金水準を見ると中小企業の正社員は大企業の正社員に比べると年功賃金の要素が小さく、相対的に成果主義・能力主義的な性格が強いものと思われる。
・中小企業は組織が小さく経営者の目が行き届きやすいため、従業員の成果に応じた賃金制度の運用を行いやすいと考えられる。アンケート調査でも、企業が考える成果給の導入のデメリットについて、従業員数の多い企業ほど成果を評価するための制度の運用が難しいとの回答が多くなる傾向が見られる。
・成果給を重視している企業でも、年功序列を重視している企業でも、企業業績には大きな差が見られない。長期勤続の促進により熟練技能の蓄積が必要かどうか等、企業の特性や経営戦略等に応じて最適な賃金設計を行うことが必要。
(2) 仕事のやりがいの現状と従業員の意欲の向上
・労働者が感じる仕事のやりがいは年々低下傾向。大企業と中小企業の正社員について見てみると、大企業の方が仕事のやりがいを感じている者が若干多いが、中小企業でもやりがいを感じている者は多く、大企業と比べて遜色はない。
・勤続年数10年以上の従業員については、10年前と比べて現在の方が仕事のやりがいが大きくなっていると回答している従業員が中小企業の方が多い。幅をもって見る必要はあるが、中小企業の仕事のやりがいが大企業よりも低いとは言えない。
・仕事のやりがいが満たされていると従業員が回答している企業は、黒字企業で業況が良いという傾向が見られる。従業員が感じる仕事のやりがいを高め、意欲を引き出していく工夫をすることが重要。
・やりがいの源泉として最も大きいのが「賃金水準」であるが、二番目には「自分がした仕事に対する社内の評価」が挙げられている。
・従業員の意欲を引き出していくため、従業員の仕事をしっかりと評価したり、仕事をやり遂げた達成感を高める工夫をすることの重要性を示唆。
3.働き方とワーク・ライフ・バランス
(1) 労働時間とワーク・ライフ・バランスの現状
・正社員の労働時間は中小企業の方が大企業よりも長い。これは、年間休日総数が中小企業の方が少ないことを反映。
・このように労働時間に差異があるものの、仕事と生活の調和については、大企業も中小企業も、正社員の約4割が「取れていない」または「どちらかと言えば取れていない」と感じており、両者の間で大きな差は見られない。
(2) ワーク・ライフ・バランスの推進のための課題
・ワーク・ライフ・バランスを推進するための課題としては、経営トップや管理職層の奨励・意識改革のほか、仕事をシェアするバックアップ体制の構築が挙げられる。
・ワーク・ライフ・バランスに取り組む中小企業は収益状況が悪いということはなく、むしろ良い企業が多い傾向が見られる。
・景気後退に伴って残業が減少している今、ワーク・ライフ・バランスの推進や従業員の意欲の向上を図る観点から、従業員の働き方の点検・見直しをすることが重要。
(3) 女性労働者の活用の現状と課題
・育児のために退職した後、6割の女性が就業したいと考えているものの、就業していない。育児後の女性に対して、中小企業は正社員として働く場を大企業よりも多く提供しており、こうした面でも中小企業は重要な役割を果たしている。
・女性が子どもを育てながら働き続けるための取組に関して、中小企業は有能な人材の確保・維持等に資すると感じている。しかし、育児休業・休暇制度等の有効性をはじめ、中小企業と従業員の間で意識のギャップが見られる。女性労働者の能力を十分に活用する観点から、現状を再点検していくことが重要。
(4) 高齢労働者の活用の現状と課題
中小企業の従業員は高齢になっても働きたいと考えている者が多く、実際、65歳定年や定年のない中小企業は大企業に比べて多い。今後、我が国の高齢化が一層進展していく中、中小企業における高齢労働者の積極活用が重要。
~中小企業白書2009年版のまとめ~
1) 我が国の景気が急速に悪化し、中小企業の業況、資金繰り等は一段と厳しさを増した。政府としては、資金繰り対策、下請取引の適正化等に取り組んだ。
2) かつてない内外需の減少の中で、変化した市場ニーズを把握し、それに対応する製品・サービスの開発・供給、販路の開拓等、中小企業としての強みを活かしつつ、イノベーションの実現に取り組んでいくことが重要。
3) 雇用情勢が急速に厳しさを増す中、中小企業にとって重要な経営資源である人材を確保し育成していくためには、足下の雇用の維持に加え、ミスマッチを踏まえた人材の橋渡しとその支援が重要。
中小企業は、経営者と従業員のコミュニケーションを高め、従業員の意欲や能力の向上に取り組み、経営者と従業員が一丸となって厳しい経営環境を乗り越え、一層の発展を遂げていくことが期待される。
(出所:2009年版中小企業白書)

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