食品残さを肥料化するにあたり、以下の項目を検討する。
(1)肥料取締法の定義
食品残さを活用して肥料を製造するには、「肥料取締法」が適用され、同法では、以下の定義を用いている。
① 肥料植物の栄養に供すること又は植物の栽培に資するため土壌に化学的変化をもたらすことを目的として土地にほどこされる物及び植物の栄養に供することを目的として植物にほどこされる物をいう。
② 特殊肥料農林水産大臣の指定する米ぬか、堆肥その他の肥料をいい、「普通肥料」とは、特殊肥料以外の肥料をいう。
③ 保証成分量生産業者、輸入業者又は販売業者が、その生産し、輸入し、又は販売する普通肥料につき、それが含有しているものとして保証する主成分(肥料の種別ごとに政令で定める主要な成分をいう。以下同じ。)の最小量を百分比で表わしたものをいう。
④ 生産業者肥料の生産(配合、加工及び採取を含む)を業とする者をいい、「輸入業者」とは、肥料の輸入を業とする者をいい、「販売業者」とは、肥料の販売を業とする者であって生産業者及び輸入業者以外のものをいう。
(2)肥料の成分
肥料を大別すると化学肥料と有機質肥料に分かれる。
化学肥料は、化学的方法により製造される肥料をいい、有機質肥料は動植物質資材を原料とした肥料を指す。
また、化学肥料は、硫酸アンモニア、尿素、過りん酸石灰、塩化加里、化成肥料等一般的に速効性のものが多いが、最近は緩効性の化学肥料も出回っている。
有機質肥料は、油粕類、魚粕粉末類、骨粉類等の普通肥料に分類されるもの及び米ぬか、堆肥、汚泥肥料等の特殊肥料に分類されるものがある。
肥料取締法では、肥料に含まれる主要な成分を定めている。
(3)公定規格
普通肥料については、含有すべき主成分の最小量又は最大量、含有を許される植物にとつての有害成分の最大量その他必要な事項について、種類ごとに規格が定められている。
ここでは、副産複合肥料についてみていく。
副産複合肥料とは、食品工業又は化学工業において副産されたものであって、窒素、りん酸又は加里のいずれか2以上を含有するものをいう。
含有すべき主成分の最小量、含有を許される有害成分の最大量、その他の制限事項については以下のとおりである。
★副産植物質肥料(食品工業又は発酵工業において副産されたものであつて、植物質の原料に由来するものをいう。)
※含有すべき主成分の最小量(%)
- 窒素全量を保証するものにあつては窒素全量 3.5
- 窒素全量のほかアンモニア性窒素、りん酸全量又は加里全量を保証するものにあつては窒素全量及びりん酸全量又は加里全量の合計量 5.0、 窒素全量 1.0、 アンモニア性窒素については 1.0 、りん酸全量については 1.0 、加里全量については 1.0
★副産動物質肥料(食品工業、繊維工業、ゼラチン工業又はなめしかわ製造業において副産されたものであつて、動物質の原料に由来するものをいう。)
※含有すべき主成分の最小量(%)
- 窒素全量を保証するものにあつては窒素全量 6.0
- 窒素全量のほかりん酸全量又は加里全量を保証するものにあつては窒素全量及びりん酸全量又は加里全量の合計量 10.0 、窒素全量 2.0、 りん酸全量については 2.0、 加里全量については 9.0
※含有を許される有害成分の最大量(%)
- 窒素全量の含有率1.0%につきひ素 0.01 カドミウム0.00008
※その他の制限事項
- 牛の部位を原料とする場合にあつては、せき柱等が混合しないものとして農林水産大臣の確認を受けた工程において製造されたものであること。
(4)肥料化の留意点
食品産業廃棄物を利用して肥料化するためには、各種有機質資材の特性を調査・分析する必要があることから、有機物の品質、成分、重金属含量についてみていく。
①有機物の品質
肥料化における品質については、有機質肥料推奨基準に係る認証要領(全国農業協同組合中央会)等がある。
「認証要領」とは、肥料の種類毎に設定した推奨基準に適合することを自ら確認し、推奨肥料である旨の表示を行う際に従うべき要領である。
利用者に判断材料を提供し、有機質肥料を積極的かつ適切に農地利用してもらうことを目的として、肥料の品質の特徴に関する新たな品質基準と表示基準として作成された。
規制基準ではなく、この基準に基づく推奨は任意なので、基準に満たないものでも肥料としての流通は可能である。
基準は、各肥料に共通する品質基準と、各々の種類別品質基準から成り立っている。
有機質の品質として、共通して求められることは、
- ヒ素、カドミウム、水銀の濃度が、それぞれ乾物当り50ppm、5ppm、2ppm以下であること、
- 植物の生育に異常がないこと(検定法:コマツナによる幼植物実験)、
- 乾物当りの銅及び亜鉛の濃度が、それぞれ600ppm、1,800ppm以下であること
である。
さらに、品質で重要なのは腐熟度である。
腐熟度を判定するには、C/N比 、幼植物試験法、硝酸検出法、CEC測定法、臭気評価法、ポリ袋評価法がある。
C/N比は、原料の種類によって基準が異なるが、一般的には25%以上ある状態で未熟、10~20%で完熟とされる。
分析法により値がバラツクこともあり、全量分析値であることから、真の腐熟度を示さない場合がある。
バーク堆肥、家畜ふん堆肥、下水道汚泥堆肥の品質基準は以下の通りである。
※バーク堆肥の品質基準 (日本バーク堆肥協会)
- 有機物の含有率(乾物) 70%以上
- 炭素率[C/N比] 35以下
- 全窒素[N] 1.2%以上(乾物)
- 全リン酸[P2O5] 0.5%以上(乾物)
- 全カリ[K2O] 0.2%以上(乾物)
- pH(現物) 5.5-7.5
- 水分(現物) 55-65%
※家畜ふん堆肥の品質基準(全国農業協同組合中央会)
- 有機物の含有率(乾物) 60%以上
- 炭素率[C/N比] 30以下
- 全窒素[N] 1.0%以上(乾物)
- 全リン酸[P2O5] 1.0%以上(乾物)
- 全カリ[K2O] 1.0%以上(乾物)
- EC(現物) 5mS/cm以下
- 水分(現物) 70%以下
※下水汚泥肥料の品質基準
- 有機物の含有率(乾物) 35%以上
- 炭素率[C/N比] 10以下
- 全窒素[N] 2.0%以上(乾物)
- 全リン酸[P2O5] 2.0%以上(乾物)
- アルカリ分 25%以下(乾物)
- pH(現物) -
- 水分(現物) 30%以下
※下水汚泥堆肥の品質基準
- 有機物の含有率(乾物)35%以上
- 炭素率[C/N比]20以下
- 全窒素[N]1.5%以上(乾物)
- 全リン酸[P2O5]2.0%以上(乾物)
- アルカリ分25%以下(乾物)
- pH(現物)8.5 以下
- 水分(現物)50%以下
②有機物の成分
また、作物が一定の収量を確保するためには、必要な肥料分があり、例えばトマト100㎏生産するために必要となるのは、窒素0.27㎏、リン酸0.07㎏、カリ0.51㎏、石灰0.22㎏、苦土0.05㎏となる。
③有機物の重金属含量
土壌へ施用された重金属は一般に土壌に蓄積する性質を有することから、亜鉛等重金属含量の高い有機物の使用に当たっては、農用地への使用は極力避け、公園・道路緑地や街路樹等農業分野以外に使用することが望ましいとされている。
ただ、農用地に有機物等を多量に連用する場合、重金属が土壌へ持ち込まれる可能性があることから生活環境への影響を未然に防止するために指針が設けられている。
その指針とは、「農用地における土壌中の重金属等の蓄積防止に係る管理基準について」(昭和59年11月8日付け環水土第149号環境庁水質保全局長通達)に基づき、土壌(乾土)1キログラムにつき亜鉛120ミリグラム(120ppm:全亜鉛濃度)を超えないようにすることである。
亜鉛は、土壌汚染の未然防止を目的に、監視上有効な物質であることから農用地土壌の自然賦存量から亜鉛濃度120ppmの管理基準が定められており、亜鉛を指標にすることは、カドミウムやヒ素など有害物質の蓄積を最小限に抑えることを目的としている。
有機物施用の際の前提条件は、
1) 有機物の性状は衛生及び取扱い面、作物生育への影響、安全性等の点から生原料(資源)を直接利用せず、堆肥化処理を行い完熟したもの。
2) 施用する有機物は、肥料取締法に基づき登録または届出があるものであって、含水率、pH及びアルカリ分、肥料成分(窒素、リン酸、カリ、苦土、石灰等)、重金属(亜鉛、銅、カドミウム等)の含有量が明らかにされているもの。
3) 自家製の有機物についても上記の含有量が明らかなもの。
となっている。
使用する有機物の分析は、全窒素、全炭素、C/N比などの一般分析項目に加え、亜鉛、銅、カドミウム等の重金属についても分析を行う。
亜鉛については、強酸分解法による全亜鉛含量とする。
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