売上高を無理やり伸ばそうとすると、ヒト、モノ、カネを増やすことになり、他人資本からの資金調達も必要となる可能性があります。
損益分岐点売上高の考え方を取り入れれば、売上高を伸ばすことだけが業績向上ではないことに気づくはずです。
また、損益分岐点を下げるための「コスト削減」を図るには、無駄な在庫を持たない、売掛金は早期回収する、利益に貢献しない固定資産は売却するなど、B/Sのスリム化を図り、経営体質を強化する考え方とも連動します。
◆損益分岐点
全ての費用を賄って利益も損失も発生しない状態・・・収支トントンの売上高を「損益分岐点」といいます。この損益分岐点の考え方は、企業を分析する場合だけでなく売上目標を設定する場合など、いろいろな目的に活用できます。
(1)損益分岐点の理解
①「変動費」と「固定費」
損益分岐点は、全ての費用を賄って利益も損失も発生しない売上高を知るための技術です。そのためには、売上高との関連で費用をとらえる必要があります。費用の中には、売上高の増減に全く関係しない費用と売上高の増減とともに増減する費用があります。前者を「固定費」、後者を「変動費」といいます。
固定費は、売上高や生産量に関係なく、一定して変化しない性格を持つ費用です。例えば、減価償却費や火災保険料や給料などの人件費などがあります。変動費は、売上高や生産量に比例して増減する性格を持つ費用です。例えば、直接材料費や仕入原価や荷造運賃などがあります。
(2)変動費か固定費か~費用分解~
①個別費用法・・・勘定科目毎に性格をみて、変動費と固定費に分解します。
<手順>
1)経理担当者数人で、勘定科目ごとに変動費か固定費かを判断する。 2)一致する科目については、変動費か固定費とする。 3)何度やっても、不一致の科目については、準変動費とし、②以降の方法で固定費と変動費に分ける。 4)以上の結果を区分表にして、ルール化する。 5)何度か改訂をして、より実態に合わせるようにする。
②総費用法
2期の売上高と総費用を使って算出します。(当期総費用-前期総費用)÷(当期売上高-前期売上高)=変動費率売上高×変動費率=変動費 当期総費用-変動費=固定費
③最小自乗法
次の連立方程式で算出します。 売上高・・x 総費用・・y 年また月数・・n 固定費・・a 変動費率・・b Σy=na+bΣx Σxy=aΣx+bΣx2
④スキャターグラフ法
グラフで固定費を知る方法です。
<手順> 1)費用と売上高で、散布図を作成します。 2)これらの点とバランスをとるような直線を引きます。 3)この直線と費用を示す縦軸との交差する点が、固定費の額を意味します。なお、Excelなどの表計算ソフトなら、グラフ機能で作成できます。
⑤最も簡便な方法
損益計算書で表示される売上原価を変動費とし、その他の経常費用を固定費として損益分岐点を算出する方法です。少々、荒っぽい方法ですが、一応の目安を得ることができます。
(3)損益分岐点グラフ
損益分岐点を図解すると下図のようになります。
売上高がゼロでも、固定費は発生します。売上高が増加してくると、変動費も増加してきます。固定費と変動費の合計が総費用です。
売上で、総費用を賄うので、売上高線が変動費線の下にある状態は、まだ全費用を賄ってはいません。売上高線が変動費線の上にきて、はじめて全費用を賄ったといえます。従って、売上高線と変動費線が交差する点が、プラスマイナスゼロの地点で、「損益分岐点」です。
(4)損益分岐点の計算式
売上高、費用(変動費と固定費)、利益との関係を式で表すと、
売上高=変動費+限界利益
限界利益=売上高-変動費
限界利益=固定費+利益
損益分岐点=変動費+限界利益(=固定費)
※利益=0の場合
この関係から売上高に対する変動費の割合(変動費率)がわかれば限界利益の割合(限界利益率)もわかります。
限界利益率=1-(変動費÷売上高)
「限界利益=固定費」の場合が、損益分岐点なので
損益分岐点×限界利益率=固定費
↓
損益分岐点=固定費÷限界利益率
損益分岐点=固定費÷(1-(変動費÷売上高))
この式を使えば、簡単に損益分岐点を計算できます。
(5)変動費率、固定費を下げて損益分岐点比率を改善する
変動費率や固定費が上がったり下がったりすると、損益分岐点も上がったり下がったりします。損益分岐点が上がると、その分だけ売上を拡大する必要があります。変動費率や固定費を下げることは、重要な経営努力です。
(6)損益分岐点比率と安全余裕率
損益分岐点よりも、実際の売上高が上の場合、少々売上高が低下しても赤字に転落せず、安全だといえます。これを測定する指標には、「損益分岐点比率」と「安全余裕率」があります。
計算式:
損益分岐点比率=損益分岐点÷実際売上高
安全余裕率=1-損益分岐点比率
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