平常時におけるBCPの策定と運用(基本コース)

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1.平常時におけるBCPの策定と運用(基本コース)

中小企業BCP策定運用指針「基本コース」では、中小企業にとって最低限必要とされるBCPを、「できるだけ早く」、そして「できるだけ簡単に」つくるための策定手順について、解説している。

基本コースでは、主に経営者自身の主観で「7. BCPの様式類」にある各様式に記入することで、BCPの策定までを行う。

記入したシートの内容は、全従業員と共有し、緊急事態に備える。

(1) 5つのプロセス

基本コースでは、BCP策定・運用に係る5つのプロセスで構成されている。そのプロセスとは、

①事業を理解する

② BCPの準備、事前対策を検討する

③BCPを策定する

④BCP文化を定着させる

BCPの診断、維持・更新を行う

である。

 

★プロセス1・・・事業を理解する

(1)優先順位を付ける

まずはじめに、 事業を理解するというプロセスがあるが、このプロセスの目的は、プライオリティ(優先順位)の高い事業や業務を決めることである。

企業においては、大小様々な事業と、それに関わるいくつかの業務があるが、大災害や大事故の発生時には、限りある人員や資機材の範囲内で、あなたの会社の事業を継続させていかなければなならない。

そのため、まずどの商品を優先的につくるか、どのサービスを優先的に提供するかという経営判断を予め行っておくことが、BCPの第一歩となる。

(2) このプロセスでの実施内容

① 事業への影響度を評価する

まずは、会社の中核事業を特定する。

中核事業」とは、指針では「会社の存続に関わる最も重要性(または緊急性)の高い事業」を示している。

中核事業は最終的には経営者の判断によって決定されるものであり、会社において重要と思われる事業をいくつかあげて、その中で財務面、顧客関係面、社会的要求面から、優先順位を付けていく。

中核事業を特定したら、次は、受注、部材在庫管理、出荷、配送、支払い、決済といった、中核事業に付随する業務を把握する。指針では、この業務のことを「重要業務」と呼んでいる。

ここで検討するのが、会社の中核事業及び重要業務を継続するために必要な資源(人、物、金、情報等)には何があるか。可能な限り漏れが無いように、思い付く限りあげていく。

指針では、これらの資源を「ボトルネック資源」と呼んでおり、中核事業重要業務、資源の関係は、次のようになる。

中核事業 → 重要業務A → 重要業務A実施に必要な経営資源 → ヒト、モノ、カネ、情報

        → 重要業務B → 重要業務B実施に必要な経営資源 → ヒト、モノ、カネ、情報

       → 重要業務C → 重要業務A実施に必要な経営資源 → ヒト、モノ、カネ、情報

例えば、重要業務を実施するために必要な経営資源のうち、「ヒト」には、従業員や協力会社が含まれ、「モノ」には、施設や設備、原材料、電力・ガス・水道といったインフラも含まれる。

また、中核事業を復旧させるまでの期限の目安となる目標復旧時間も決めておく。

目標復旧時間を決めるにあたっては、

a.中核事業に関わる取引先と事前に調整して決める

b.中核事業の停止による収入途絶等の損害に、会社が耐えられる期間にもとづいて決める」の2つを考慮して決定する。

会社の中核事業目標復旧時間はどの程度か、目標復旧時間を検討する際には、運用指針サイトにある資料05資料06資料07が参考にできる。)

② 中核事業が受ける被害を評価する

会社の中核事業が、地震、風水害、火災等の災害によりどの程度の影響を受けるのかを評価。

そのためには、前のステップで把握した中核事業の継続に必要な資源が、どのような災害によって、どの程度の影響を受け、中核事業の継続にどの程度の支障をきたすのかを、可能な限り漏れなく把握することが望まれる。

中核事業が影響を受けると思われる災害には何があるか、災害を検討する際には、運用指針サイトにある資料03が参考にできる。

また、想定した各災害が、中核事業の継続に必要な資源のそれぞれに与える影響を検討する際には、資料03資料04が参考にできる。

この際、中核事業が影響を受ける災害それぞれについて、中核事業の継続に必要な資源を、

a.目標復旧時間内に機能回復しないもの(回復させられないもの)

b.目標復旧時間内に機能回復するもの(させられるもの)

のどちらかに区別しておくことが望ましい。

a.目標復旧時間内に機能回復しないもの(回復させられないもの)については、

・その資源については、代替となる資源をどのように確保するか

b.目標復旧時間内に機能回復するもの(させられるもの)については、

・その資源をどのように機能回復させるか

・その資源の機能が回復するまでの時間をどのように対応したらよいか

に関する検討につなげる。

影響度の評価を実施するために、運用指針サイトにある〔様式07〕の「中核事業影響度評価フォーム」を利用して、より体系的に分析することも推奨される。

③ 財務状況を分析する

会社が地震等により被災した場合、建物・設備の復旧費用や事業中断による損失を具体的に概算しておく。

その状況によっては、被害を軽減するための以下のような事前対策を採るべきかどうかの判断をする。

a.1ヶ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保

b.適切な損害保険の加入

c.事前の対策実施 等

災害発生後、多くの中小企業で復旧資金の借入が必要になるものと考えられる。

このBCPを実行することによって、災害発生後の政府系中小企業金融機関・保証協会等の災害復旧貸付・保証制度をより有効に活用できる。

被災中小企業に対する公的支援制度については、資料10が参考にできる。

BCP帳票への記入】

ここまでの検討結果を整理するために、"〔様式06〕中核事業に係る情報"が利用できる。

ここに整理される情報はあくまで基本的な情報なので、その他に必要な情報は、備考欄を活用する等して、参照しやすいように整理しておく。

 

★プロセス2・・・BCPの準備、事前対策を検討する

(1) このプロセスの目的

このプロセスでは、緊急事態発生時において、会社の中核事業を継続・復旧させるための準備及び事前対策を検討する。

このプロセスで考えておくべきことは、具体的に次の2つ。

①中核事業に必要な資源を緊急事態発生時にどのように確保するかについて、事前に把握しておくこと。この検討をしておくことにより、緊急時における事業復旧をより迅速に行うことができるため。

②そもそも災害等が発生しても大きな被害を受けないように、中核事業に大きな影響を与える災害及び資源に対して、事前の対策を検討しておくこと。

(2) このプロセスでの実施内容

① 事業継続のための代替策を検討しておく

中核事業の継続に必要な資源が、災害により被害を受けていなければ問題はないが、被災して利用できなくなってしまった場合は、以下のような資源の代替を確保する手段を検討しておく。

a.情報連絡の拠点となる場所

b.被災した重要施設・設備

c.臨時従業員(「被災生活支援」と「事業復旧」との2通り)

d.資金

e.通信手段・各種インフラ(電力、ガス、水道等)

f.情報類(バックアップの方針)

BCP帳票への記入】

 ここまでの検討結果を、"〔様式08〕事業継続に係る各種資源の代替の情報" を利用して整理する。

② 事前対策を検討・実施する

これまでの分析で得られた結果に基づき、目標復旧時間内に事業を復旧できるようにするための事前対策を検討する。

中核事業を継続するための障害となる資源(人、物、金、情報等)を災害の影響から保護する、または、代替の準備をするといった対策を実施する。

事前対策は、「ソフトウェア対策」と「ハードウェア対策」の2つに大別できる。

一般的にハードウェア対策は、ソフトウェア対策に比べて導入資金が必要とされるが、会社には予算上の限度がある。

そのため、まずは、ソフトウェア対策を確実に実施し、多額の費用が発生するハードウェア対策については、本業での利益が出た時に、それを少しずつ事前対策に投資するようにして、数年間程度を目処に対策完了を目指すことが現実的。

ただしその場合には、以下の視点にもとづいて、対策を実施する優先順位付けをしておくことが望まれる。

a.中核事業が影響を受ける可能性が高いと思われる災害向けの対策

b.想定した災害により影響を受ける中核事業上の必要資源向けの対策

これらの視点に基づき、順次、対策の実施に取りかかる。

また、事業所建屋の耐震化や防災に資する設備導入等、ハードウェア面での事前対策のための融資制度が、中小企業庁等により検討されている。

中小企業向けの災害対策支援制度については、資料09が参考にできる。

【事前対策の検討にあたって】

「6.事前対策メニュー一覧」に、一般的な対策項目と、それに要する費用の目安が示されていますので、事前対策の検討にあたっては、そちらを参考にする。

 

★プロセス3・・・BCPを策定する

(1) このプロセスの目的

このプロセスでは、基本的なBCPの策定と、それを、いつ、どのような体制で利用するかについて事前に整理することを目的としている。

(2) このプロセスでの実施内容

① BCP発動基準を明確にする

会社に緊急事態が発生した場合、策定したBCPを有効に機能させるためには、BCPの発動基準を明確にしておくことが大変重要である。

BCPの発動基準を設定する際のポイントは、会社の中核事業が何らかの影響を受け、かつ、それに対して早期の対応をしなければ、目標復旧時間内に中核事業を復旧させることができないことを正しく把握すること。

そのため、中核事業に甚大な影響を与える可能性のある災害とその規模にもとづいて、BCP発動基準を定めることが望ましい。

② BCP発動時の体制を明確にする

この次に、緊急事態が発生した場合におけるBCP発動後の対応体制を明確にしておく必要がある。

緊急事態発生時には、全体のリーダーである経営者によるトップダウンの指揮命令によって従業員を先導することが重要であり、指揮命令と情報の管理に注力することになる。

また、BCP発動後から事業復旧を完遂するまでの間には、主として以下の機能をもった組織体制が望まれる。

各機能にチームを構成してリーダーを立て、チームリーダーへの指揮命令をリーダー(社長等)が行うという体制が望まれる。

a.復旧対応機能

施設や設備の復旧等、社内における復旧対応

b.外部対応機能

取引先や協力会社、組合や商工会との連絡や各種調整

c.財務管理機能

事業復旧のための資金調達や各種決済

d.後方支援機能

従業員の参集管理や食料手配、負傷した従業員の対応等

③ 事業継続に関連する情報の整理と文書化をする

ここでは、緊急事態発生時の事業継続において必要となる情報を事前に整理し、付属の帳票フォーマットに記入することにより、BCPの文書化を実施する。

ここで策定するBCPは、大きく分けて次の2つの要素からなる。

a.BCP(事業継続計画)の発動フロー

b.事業継続に必要な各種情報の帳票類

a. 「BCP事業継続計画)の発動フロー」について

サイトには、初動対応から事業復旧にいたるまでの基本的な対応手順のひな形となる「事業継続計画の発動フロー」が添付されているので、BCP策定の第一段階としては、これが利用できる。

b.「事業継続に必要な各種情報の帳票類」について

このステップでは、a.の「BCP(事業継続計画)の発動フロー」に示される手順ごとに、必要となる情報を整理し、文書化を行う。

サイトには、情報を整理する帳票のひな形となる様式集が添付されているので、BCP策定の第一段階としては、この様式を利用して情報を整理できる。これにより、基本的なBCPが策定できる。

■BCP様式書類一覧

http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_a/bcpgl_03a_3_2.html

 

★プロセス4・・・BCP文化を定着させる

(1) このプロセスの目的

会社へのBCPの定着という意味では、ただBCPを策定していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従業員が有効に活用できなければ意味がない。

BCPを実効性の高いものにしようとするならば、災害時にBCPを利用して実際に復旧活動にあたる従業員が、BCP運用に対して前向きに取り組む必要がある。

そのためには、BCPに関する訓練や教育が積極的に行われるとともに、BCP運用に対する経営者の前向きな姿勢が、会社の文化として定着することが重要になってくる。

指針では、そのような文化のことを「BCP文化」と表現している。

BCPの運用は会社が存続する限り継続されるべき活動であり、維持・更新と、教育・研修を継続的に実施しながら、BCPを会社に定着させることが重要となってきます。

(2) このプロセスでの実施内容

① 従業員へのBCP教育を実施する

従業員に対して行うべきBCP教育の内容は、大きく分けて2つあります。

a.従業員にBCP運用活動を受け入れてもらう

BCPや防災に関する社内ディスカッション

BCPや防災に関する勉強会 等

b.防災や災害時対応に関する知識や技能を従業員に身に付けてもらう

心肺蘇生法等の応急救護の受講支援

BCPや防災対策関連のセミナーへの参加支援 等

② BCP訓練を実施する

緊急事態発生時にBCPが有効に活用されるためには、従業員へのBCP教育と併せて、定期的な訓練を実施することが望まれる。

訓練の目的としては、主に以下のものがあげられる。

・策定したBCPの実効性を評価すること

・各従業員のBCPに対する理解を深め、その活動に対して積極的に取り組むとともに、緊急事態発生時での各自の役割を明確に認識してもらうこと

BCPの不備や欠陥等の改正すべき点を明らかにすること

・従業員間での連携・協力を促すこと 等

BCP訓練には様々なレベルや種類があるが、訓練を無理なく行うためには、以下のような、BCP発動手順の一部分を取り上げた訓練(要素訓練)を実施することにより、従業員に着実に習得させていくことが望ましい。

机上訓練

・電話連絡網・緊急時通報の演習

・代替施設への移動訓練

バックアップしているデータを取り出す訓練 等

また、社内訓練でなくとも、各自治体が主催する防災訓練も行われている。

このような訓練に参加することは、社内の防災能力を高めるだけでなく、自治体と会社間、または、近隣の会社同士の連携や協力を高めることにもつながる。

地域間での連携や協力体制は、災害発生時においての、あなたの会社の事業継続に対して、大変有効な要素となりますから、このような訓練にも積極的に参加することが望まれる。

BCPに関する教育や訓練については、資料15が参考にできる。

③ BCP文化を醸成する

BCP文化の醸成」の実現には、長期的な視点で経営者と従業員の意識を高めていくことが望まれる。

また、BCP運用に対する従業員の認識を促進させるためには、BCPや防災に関する情報の社内への発信等を、平時より継続的に実施する必要がある。

経営者が平時から意識しておくべき点の例は以下の通り

・従業員との平時からのコミュニケーション

・従業員のための安全対策の実施

・取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践

・その他、BCPや防災に関する各種活動の支援

 

★プロセス5・・・BCPの診断、維持・更新を行う

(1) このプロセスの目的

「いざ、BCPを発動してみたものの、整理されている情報が古くなっており、役に立たなかった!」ということでは、せっかくBCPを構築しても意味がない。

このような事態に陥らないためには、BCPが会社の中核事業の復旧継続に本当に有効かどうかをチェックするとともに、会社に関する情報を、極力、最新の状態に維持しておく必要がある。

また、必要に応じてBCPの運用体制の見直しや運用資金(事前対策費用等)の確保を行う。

BCP運用は継続的な活動であり、それに終わりはない。

会社が存続する限り、BCPに関するこれらの活動は、定期的かつ確実に実施することが望まれる。

(2) このプロセスでの実施内容

① BCPのチェックを行う

このステップでは、『BCP策定・運用状況の自己診断チェックリスト』を利用して、これまでに策定した現状のBCPを評価する。

このステップを通して見直すべき改善点を洗い出す。

② BCPの維持・更新を行う

策定したBCPをより実効性の高いものにするためには、会社の最新の状況を反映したものに維持するとともに、BCPの実施に関わる社内体制の変更等があった場合には、必要に応じてBCP運用体制の見直しが望まれる。

また、事前対策等に必要な運用資金を見積もり、確保する。

BCPを更新すべき頻度や行うべき条件は会社の特性や規模等によって変わるが、どの会社にも共通した条件としては、以下の例がある。

・あなたの会社の組織体制に大きな変更があった場合

・取引先(供給元または納品先)に大きな変更があった場合

・あなたの会社の中核事業に変更があった場合

・新しい事業ライン、製品、またはサービスを開発した場合

・主要な情報通信システム、ネットワークに大幅な変更があった場合

・従業員の連絡先に変更があった場合

・あなたの会社の業務に関連する、国や業界のガイドラインが改訂された場合

サプライチェーンからの要求に変更があった場合 等

なお、従業員の連絡先が適切に修正されることは、安否確認のために重要となる。

そのため、連絡先の変更を会社に申し出るための手順が、従業員に対して明確にされている必要がある。

また、上記したような大きな事業変化がない場合でも、1年ごとの見直しが望まれる。

BCP更新の頻度を決定したら、〔様式02〕に記入する。

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謹んで
震災のお見舞いを
申し上げます

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この度の東日本大震災により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。
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