BCP(事業継続計画)は、企業が自然災害、大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段などを取り決めておく計画のこと。
BCPの特徴は、①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する、②緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく、③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく、④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく、⑤全ての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図っておくことにある。
BCPの策定・運用にあたっては、まずBCPの基本方針の立案と運用体制を確立し、日常的に策定・運用のサイクルを回すことがポイントとなる。
前回は、中小企業BCP策定運用指針の「基本コース」について学んだので、今回は、「中級コース」についてみていく。
まず、BCPの策定・運用に取り組むにあたり、会社の基本方針を立案する。そして、BCPを策定し、運用を推進していく社内体制を決める。
立案・決定した基本方針と運用体制を、BCP作成運用指針サイトにある【7.BCPの様式類】に記入し、会社のBCPの一部としていく。
1.BCP基本方針の立案
何のためにBCPを策定し、日常的に運用するのか。中小企業がBCPを策定・運用することにどんな意味合いがあるのか。会社のBCP基本方針を作成する(〔様式02〕BCPの基本方針に記入)
(1)BCP策定・運用の目的
企業が生き抜くためには、従業員とその家族の生命や健康を守った上で、事業を継続して顧客の信用を守り、売上げを維持する必要がある。
事業と売上げが確保できれば、従業員の雇用も守ることができる。
同時に地域経済の活力を守ることにもつながる。
BCPを策定し運用する目的は、緊急時においても事業を継続できるように準備しておくことで、顧客からの信用、従業員の雇用、地域経済の活力の3つを守ろうとするもの。
(2)中小企業BCPの要点
BCPは、大企業から中規模、家族経営に至るまで企業規模に関係なく策定・運用するものだが、特に中小企業のBCPで重視したい点として、次の4点をあげることができる。
①企業同士で助け合う
中小企業では、日常的に業務を分担したり、情報交換したりと助け合いの中で事業を行っている。
緊急時において同業者組合や取引企業同士、被害の少ない企業が困っている企業を助ける、そのことが結局は自社の事業継続にもつながっていく。
②緊急時であっても商取引上のモラルを守る
協力会社への発注を維持する†10、取引業者へきちんと支払いをする、便乗値上げはしない、こうしたモラルが守れないと、企業の信用が失墜し、工場や店舗が直っても事業の復旧は望めない。
③地域を大切にする
中小企業では、顧客が地域住民であったり、経営者や従業員も地域住民の一人であったりする。
企業の事業継続とともに、企業の能力を活かして、被災者の救出や商品の提供等の地域貢献活動が望まれる。
④公的支援制度を活用する
わが国では中小企業向けに、公的金融機関による緊急時融資制度や特別相談窓口の開設などの各種支援制度が充実している。
支援制度を活用しながら復旧・復興を図る。
2.策定・運用体制の確立
指針に従ってBCPを策定し、日常的な運用を推進する社内の体制を決めていく(〔様式03〕BCPの策定・運用体制に記入)。
※留意点
①経営者自らが率先して策定・運用推進にあたる
BCPの策定・運用は最重要の経営課題であり、経営者のリーダーシップが不可欠。
②企業の規模や業務の役割分担に応じて人選する
家族経営のような企業では経営者1人でも構わないが、総務、財務、労務、技術、営業など役割分担が決まっている場合は、各部署からサブリーダーを参画させる。
③取引先企業や協力企業との意見交換や摺り合わせを行う
緊急時の事業継続には取引先企業や協力企業との連携が重要になる。
BCPに関する意見交換や摺り合わせをしばしば行うことを推奨。
また、協同組合や商店街の加盟企業が連携してBCP策定・運用に取り組んだり、商工会や商工会議所でBCPに関する勉強会を開いたりすることも有効。
④BCPの策定・運用推進に取り組んでいることを全ての従業員に周知する
BCPの運用は全ての従業員が対象になり、実際の緊急時には従業員の行動が計画の成否を左右する。
BCPの運用に対して従業員の参加意識を高める必要がある。
3. 平常時におけるBCPの策定と運用(中級コース)
BCPを策定し、日常的に運用する手順について説明。
(1)BCP(事業継続計画)
災害時において中核事業を中断させないようにする、または、万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させるための手順を記したものであり、災害時に利用するもの。
(2)BCPサイクル
組織が存続し続けるために中核事業の特定と事業継続に関する障害を認識し、災害時等において当該事業を継続するための手順(BCP)の確立、及び、その手順を有効に機能させるための教育や訓練、更新、災害に対する事前対策までを含めた管理プロセスのことを一般にBCM(事業継続管理)という。
指針では、BCP(事業継続計画)を策定し、それを適切な状態に維持するための様々な活動を継続的に実施するという意味で、「BCPサイクル」と表している。
(3)プロセスとステップ
指針で説明するBCPサイクルは、次の5つの「プロセス」から構成される。
3-1 事業を理解する
3-2 BCPの準備、事前対策を検討する
3-3 BCPを策定する
3-4 BCP文化を定着させる
3-5 BCPの診断、維持・更新を行う
これらの各プロセスは、いくつかの具体的な実施項目に分けられている。
この細分化された実施項目を、指針では「ステップ」と表している。
そのため、それぞれのプロセスは、いくつかのステップから構成されている。
3-1.事業を理解する
(1) このプロセスの目的
企業においては、大小様々な事業と、それに関わるいくつかの業務があるが、大災害や大事故の発生時には、限りある人員や資機材の範囲内で、会社の事業を継続させていかなければならない。
そのため、まずどの商品を優先的につくるか、どのサービスを優先的に提供するかという判断を迫られる。
このプロセスでは、当プロセスを終えた段階で、以下の質問に明確に回答できるようになることが期待されている。
(2) このプロセスでの実施内容
①事業への影響度を評価する
②中核事業が受ける被害を評価する
③財務状況を分析する
①事業への影響度を評価する
このステップの目的
企業においては、大小様々な事業と、それに関わるいくつかの業務があるが、大災害や大事故によって会社の施設や設備、または社員が被害を受けると、発災前と同じ量の商品や同じ質のサービスを顧客に提供することが難しくなる。
そのため、限りある人員や資機材の範囲内で、会社の事業を継続させていく場合には、まずどの商品を優先的につくるか、どのサービスを優先的に提供するかという判断を迫られる。
このステップでは、会社の存続に関わる最も重要性(または緊急性)の高い事業と、それを構成する営業、情報システム運用等のいくつかの業務(それぞれ「中核事業」、「重要業務」といいます。)が何であるかを把握するとともに、その中核事業(業務)を継続するためにはどのような障害があるか、また、その事業を復旧させるために許容される時間を把握する。
| A. | 優先的に事業復旧すべき重要業務を把握する |
| B. | 事業継続のための障害を把握する |
| C. |
目標復旧時間を決める |
A.優先的に事業復旧すべき中核事業を把握する
実施のポイント
まずは、会社における中核事業を選び出し、その中での優先順位を付ける。
ここでいう「中核事業」とは、それを失うと、会社の経営状態に甚大な影響を与える事業のことであり、広義的には、長期的に見て会社の評判や世間のイメージ失墜につながる事業も含まれるが、一般的な中小企業の場合は、大企業に比べて事業の数が少ないことから、商品の種類や顧客等の視点から特定することになる。
この中核事業の特定無くして、有効なBCPは策定できない。
中核事業は最終的には経営者の判断によって決定されるが、事業規模が決して大きくない会社の場合は、中核事業が明確な場合も多々あるので、手始めとしては、重要として思いつく事業をいくつかあげて、その中で、財務面、顧客関係面、社会的要求面から、優先順位を付けてもよい。
中核事業を特定する際には、以下のような視点で考えると効率的であるとされている。
会社におけるいくつかの事業において、「○○事業の操業が停止してしまったらどうなるか?」、「どのような損害が出るか?」をイメージしながら考えてみる。
- a. あなたの会社の売上げに最も寄与している事業は何ですか?
b. 商品の納期、顧客と確約しているサービスの提供時間等、期限が定められている事業のうち、 その延滞があなたの会社に与える損害が最も大きい事業は何ですか?また、その事業は、どの程 度の遅延時間までならば許容されますか?
- c. あなたの会社に課せられている法的または財政的な責務はありますか?ある場合、それ満たすためには、どの事業が必要ですか?
d. 市場シェアや会社の評判を維持するためには、どの事業が重要ですか?
B. 事業継続のための障害を把握する
実施のポイント
ここでは、特定した中核事業に対して、その事業を継続するために必要な資源(人、物、金、情報等)を把握する。
例えば、中核事業の一つが、「顧客"甲"に対して、製品"A"を製造・提供すること」であるとする。
この場合、製品"A"をひたすら作り続ければよいわけではなく、その他にも受注、出荷、配送、支払い、決済といった、中核事業に付随する業務も不可欠であることはいうまでもない。
そのため、まずは当該中核事業の遂行に必要な「重要業務」をすべて把握し、それに必要となる資源を具体的に考えていくことが望ましい。
なお、効率的に考えるための方法のひとつに、例えば、以下のような資源が「利用できなくなった」、または「無くなった」場合に、重要業務が継続できるかどうかを想像する方法がある。
「従業員、工場等の施設・店舗、設備(製造用機材等)、原材料等の供給、パソコン(インターネットや電子メールを含む)、情報管理システム、電話、電力、ガス、水道、納品のための輸送手段、各種書類・帳票類、その他」
この時、項目ごとの重要度を把握するために、「ほぼ操業できなくなる」、「人手による代替等で、一部は操業できる」、「操業にはまったく支障がない」のどれにあてはまるかを整理すると、重要業務に不可欠な資源が把握できる。
ここで、「重要業務に不可欠な資源」は、同時に「中核事業に不可欠な資源」であるともいえるので、結果として、中核事業を継続するための基本的な障害(本指針では、この障害を「ボトルネック資源」といいます。)を把握できたことになる。
また、これらの項目以外に、会社の事業に特化した障害もあると思われるが、それも併せて整理する。
C.目標復旧時間を決める
実施のポイント
災害時における中核事業復旧の遅れは、その分だけ、事業機会の損失を被っているということになる。
事業復旧が大きく遅れると、最悪の場合、主要な顧客との取引解消にもつながるため、結果として会社の存続が危ぶまれることは想像に難くない。
そこで事業中断による被害を極力小さく抑えるためには、中核事業を復旧させるまでの期限の目安となる目標復旧時間を決める必要がある。
目標復旧時間を決めるにあたっては、最低限、以下の2つを考慮する必要がある。
①中核事業に関わる取引先やサプライチェーンの要請
②会社の財務状況にもとづく時間
まず①については、中核事業の特定により、それに関連する取引先やサプライチェーンに含まれる会社が把握できるので、会社が被災した場合に、それらの取引先から許容される事業停止時間の限度を把握しなければならない。
これは、取引先の経営者や幹部従業員との直接的なコミュニケーション等を通して把握・調整しておくべき事項。
一方、②については、特定した中核事業の停止による損失に対して、会社の資金が耐えられる限界の期間を見積もっておく必要がある。
具体的には、中核事業が停止した場合の収入の途絶に加えて、納期遅延等による違約金、その間の従業員の賃金、災害対応のための臨時人員の賃金、事業所や設備機器が被災した場合の修繕や新規調達費用等が発生するので、それらの費用負担に対して、どれだけの期間耐えられる資金が会社にあるかを見極めなければならない。
以上の2点を十分に加味した上で、目標復旧時間を設定していく。
ただし、①について、被災の程度や理由により、取引先からの許容の度合いが変化することも考えられる。
例えば、広域的な自然災害によって道路やライフライン等が甚大な被害を受けたため、周辺地域の人命救助を優先するため等、事業の早期復旧に着手できない場合には、取引先からの許容の度合いが変わることがある。
そのため、目標復旧時間を設定した上で、万が一実際に被災してしまった際には、被災の規模や状況により、取引先に対して、目標設定時間よりも事業復旧が遅れることに関する理解を求めることが必要になる。
なお、過去の災害時における被災企業の目標復旧時間の設定事例があるので、業種や被災状況に留意した上で参考にしながら、目標復旧時間を設定する。(目標復旧時間を検討する際には、資料05、資料06、資料07が参考にできます。)
【BCP帳票への記入】
・ ここまでの検討結果を整理するために、"〔様式06〕中核事業に係る情報" が利用できる。
・ ここに整理される情報はあくまで基本的な情報ですので、その他に必要な情報は、備考欄を活用するなどして、参照しやすいように整理していく。
②中核事業が受ける被害を評価する
A.このステップの目的
このステップの目的は、会社の中核事業が受ける可能性がある被害にはどのようなものがあるかを把握し、被害の大きさを評価すること。
これにより、中核事業を被害から守るための取組みを検討することが可能となる。
B.実施のポイント
このステップでは、前のステップで決定したあなたの会社の中核事業が受ける被害の程度を評価する。その際、
以下の手順により評価することができる。
a.中核事業が影響を受ける可能性が高いと思われる災害を想定する
一般的に企業が影響を受ける災害には、地震、風水害、火災、鳥インフルエンザのような感染症等、様々なものがある。
理想的には、あらゆる災害に対して中核事業が受ける影響を評価するべきだが、現実的には容易ではない。
そのため、いくつかの代表的な災害を想定して、中核事業の被害を評価することが望ましい。
ただしその際、災害として想定する規模(地震であれば震度)も同時に想定しておくようにする。
この規模の設定について、どれくらいが妥当かという基準は一般的にはなく、企業ごとに異なるものなので、経営者による意思確認は重要となる。(災害を検討する際には、資料03が参考にできる。)
b.想定した各災害が中核事業のボトルネック資源に与える影響を評価する
ここでは、前のステップで把握したボトルネック資源(事業継続のための障害となる資源)を利用する。
「ほぼ操業できなくなる」または「人手による代替等で、一部は操業できる」と評価した各ボトルネック資源に対して、想定している災害が与える影響をそれぞれ考えていく。
なお、ここでは、「重要業務」におけるボトルネック資源は、同時に「中核事業」のボトルネック資源であることを前提とする。
この時、影響の度合いの目安として、次の1)~3)に示す3段階で判断してもよい。
また、影響度が判断できない場合は、高めの影響として想定しておくほうが、中核事業の継続検討において確実性をもたせるものになる。
1) 想定した災害により、ボトルネック資源は、目標復旧時間内の復旧に間に合わない程度の量の影響を受ける、または、目標復旧時間内の復旧に間に合わない程度の時間、影響を受け続けると考えられる
- 2)想定した災害により、ボトルネック資源は、ある程度の量/時間は影響を受けるが、目標復旧時間内の復旧には間に合うと考えられる
3)想定した災害からはほとんど被害を受けないと考えられる
例として、「電力」がなくなると、中核事業が「ほぼ操業できなくなる」と、評価したとする。
そして、想定している災害の一つが「震度6強の地震」である場合、それにより「電力」が受ける影響はどの程度かを考えてみる。
これは具体的には、震度6強の地震が発生した場合、何時間または何日間程度、電力の供給が停止するかという質問に置き換えることができる。
この時仮に、ボトルネック資源である「電力」への影響が、上の選択肢1)のように、中核事業の目標復旧時間に間に合わない程度であるとすると、結果として「震度6強の地震により電力が被害を受けると、中核事業を目標復旧時間内に復旧することはできない」という結論が導かれる。
このような分析を中核事業に必要なすべてのボトルネック資源について行う。
そうすることにより、ここで想定している災害が各ボトルネックに与える影響を把握できる。(災害が資源に与える影響を検討する際には、資料03、資料04が参考にできる。)
マトリクスを用いて、中核事業の復旧を大きく左右する要素といえるボトルネック資源を明らかにできる。
以上の手順により、ある一つの災害がボトルネックを通して中核事業に与える影響の全体を把握することができるが、引き続き、他の災害についても同様の手順を実施することが望まれる。
このような分析はそれ相応の時間を要するが、大事なことは、「どのような災害によってボトルネックがどの程度の影響を受け、中核事業の継続にどの程度の支障をきたすのか?」を漏れなく把握すること。
したがって、経営者の判断により、災害の種類・規模と、中核事業への影響の大きさを対応づけて設定し、以降のステップに進むことも許可される。
その場合、影響度の妥当性は継続的なBCPの運用において改善すればよい。
また、上述した影響度の評価を実施するために、〔様式07〕の「中核事業影響度評価フォーム」を用意されているので、より体系的に分析してみたい場合には、こちらを利用することも推奨されている。
③財務状況を診断する
A.このステップの目的
このステップの目的は、会社の事業所建屋の状態や現在の資産状況、損益の状況をもとに、会社が地震等により被災した場合、事業を復旧・継続するのに必要な金額を算出する。
建物・設備の復旧費用と事業が中断されることによる損失(キャッシュフローの悪化額)を予測して、復旧費用の総額を計算する。
また、会社が事業の復旧に対して借入が必要となるかどうかを把握する。
会社のキヤッシュフローが被災後どのようになるかを具体的に認識することにより、被害を軽減するための以下のような事前対策を採るべきかどうかの判断が可能になる。
なお、事前対策には、人的被害、物損被害、経済的被害があるが、このステップで検討するのは、経済的被害に対する事前対策にあたる。
・1ヶ月程度の操業停止に耐え得る資金の事前確保
・適切な損害保険の加入
・事前対策実施 等
一つ目の項目で「1ヶ月程度」としている趣旨は、緊急事態発生月の従業員給与や仕入品購入用資金の目安としたものであることに留意する。
災害発生後には、多くの中小企業で復旧資金の借入が必要になるものと考えられる。
このBCPを実行することによって、災害発生後の政府系中小企業金融機関・保証協会等の災害復旧貸付・保証制度をより有効に活用できる。
また、この分析・検討結果を持って、政府系中小企業金融機関や保証協会等に相談に行くことにより、災害復旧貸付の審査が円滑かつ迅速に進められることが期待される。(被災中小企業に対する公的支援制度については、資料10が参考にできる。)
B.実施のポイント
財務状況を評価するために、ここでは、「財務診断モデル」を利用する。
この時、会社に関するa.の情報が必要となるので、財務諸表等を参照しながら、当該情報を把握していく。
これらの情報を漏れなく入力することにより、b.の情報が自動的に計算される。
a.財務診断に必要な情報
・災害の種類と規模
・事業所建屋の建築年次、構造種類、簿価
・主な資産の種類と簿価
・毎月の固定費と変動費
・緊急事態に遭遇した場合の復旧日数や復旧費用の推定値 等
b.財務診断により得られる情報
・主な資産の種類と簿事後の毎月キャッシュフロー予測(収入と支出)
・必要な借入金額
・毎年の返済可能額 等
「財務診断シート」を利用する。
ここでの診断結果は、指針3.2.2の「事前対策を検討・実施する」において、事前に導入すべき対策の検討において利用することができる。
3-2 BCPの準備、事前対策を検討する
(1) このプロセスの目的
このプロセスでは、緊急事態発生時において、会社の中核事業を継続・復旧させるための準備及び事前対策を検討する。
このプロセスで検討する項目は、具体的に次の2つ。
① BCP発動時のボトルネック資源の代替案
② 事前の対策
はじめに、①では、前のプロセス「3.1 事業を理解する」で把握したボトルネック資源を、緊急事態発生時にどのように確保するかについて事前に把握しておくことが目的である。
この検討をしておくことにより、緊急時における事業復旧をより迅速に行うことができる。
一方、中核事業の継続のためには、そもそも災害等が発生しても、大きな被害を受けないことがもっとも望ましいから、前のプロセス「3.1 事業を理解する」で把握した、中核事業に大きな影響を与える災害及びボトルネックに対して、事前の対策を検討しておくことが望ましいといえる。
これが② の目的。
(2) このプロセスでの実施内容
①事業継続のための代替策の特定と選択をする
②事前対策を検討・実施する
①事業継続のための代替策の特定と選択をする
A. このステップの目的
中核事業を目標復旧時間内に復旧させるためには、緊急事態発生時に、中核事業の継続においてボトルネックとなる必要資源(人、物、金、情報等)をどのように確保するかが重要なことはいうまでもありません。
このステップでは、中核事業の復旧を極力早めるために、前のプロセス「① 事業を理解する」で把握したボトルネック資源について、緊急事態発生時における確保の方法や手段を事前に検討し、把握することを目的としています。
B.実施のポイント
必要な資源が災害により被害を受けていなければ問題はないが、被災して利用ができなくなってしまった場合は、代替資源を確保する手段を選択しなければならない。
このような選択肢には導入のための労力や費用の面において様々なレベルがあるので、最終的には、会社がBCP運用に対してどれだけの知恵・人材・資金を投入できるかを総合的に判断して決めることが望まれる。
また、BCP運用に対して余力以上の投資をしすぎて、通常の操業に大きな支障をきたすようでは本末転倒である。
したがって、決して無理はせず、継続的に運用していくことが可能である「身の丈に合ったBCP」を検討する必要がある。
a.情報連絡の拠点となる場所の確保
緊急事態発生時において、取引先等への早期の連絡は非常に重要であるとともに、従業員に対して事業継続対応の指揮命令を連絡するための拠点場所を確保する必要がある。
会社社屋自体に影響がなければその場所で構わないが、被害を受けた場合にどうするかを考えておく必要がある。
例えば、事業所が複数ある場合は、被災してない方の事業所を採用することが考えられる。
また、事業所が一つしかなく、そこが被災してしまった場合には、近所の商工会議所や公的施設等が利用可能かどうかを検討する必要がある。
また、場合によっては、自動車内を拠点とせざるを得ない場合もある。
b.被災した重要施設・設備の代替確保
中核事業の継続に関わる重要施設や設備が被災した場合の代替確保方針を決定する。
特に製造業の場合、施設・設備の代替確保には、以下のようなものがある。
1)同一の機能をもつ施設を協力会社等に所有し、併行で操業しておく方法
- 2)回復用の作業施設と設備類を保持する方法
3)回復用の作業場所のみ確保(または、確保すべき場所を具体的に想定)しておき、設備は購入やリース等により確保する方法
- 4)他製品の製造施設・設備を一時的に転用する方法
5)回復用の作業場所(場合によっては設備も含む)を、同業組合等を通して、他社と提供し合えるように協定を締結しておく方法
- 6)違う場所において新たに施設を建設する方法
- このうち、コストや効率の問題から、特に中小企業においては選択しにくい代替方針もあるが、基本的にはこれらの選択肢から代替方針を検討することになる。
- また、この代替方針は時間の進展にもとづいて検討する必要がある。
- 具体例としては以下のように、時系列に従って、適当な代替方針を組み合わせていくことが重要となるので、そのような方針もこのステップで検討しておくことが望ましい。
- 1)発災後3日間は、社内の他の設備を利用して事業を一部でも継続する。
2)その間に本来の設備を新たに購入またはリースの手配を行い、社内の回復用作業場所で3週間は事業を継続する。
- 3)その間に、プレハブ等により、仮施設を建設する。
- c.臨時従業員の確保
- 緊急事態発生により、従業員が業務に従事できない場合の人員代替方針を決定する。
例えば、地震により自宅が被災した従業員が多く発生し、あなたの会社の事業継続に従事できる従業員が不足する場合、または、インフルエンザの大流行により、従業員の多くが出社できなくなる場合等。
また、緊急事態発生時には、大きく分けて「被災生活支援のための要員」と「事業復旧のための要員」との2通りが必要となる。
前者は、組合や、日頃より親交の深い近隣の方等に支援を依頼することが考えられる。
後者は、会社の業務について知見があることが望まれるので、会社のOB等に依頼する等が考えられる。
このような点も含めて、臨時従業員の確保に関する方針を定めておくことは重要である。
d.資金調達の方針
緊急事態の発生により、その後の対応には少なからずの資金が必要となる。
そのため、資金調達方法に多様性をもたせるといった検討も含めて、以下のような資金調達方針について決定する。
・ 損害保険への加入
・ 共済制度の活用
・ 各種融資の活用
・ 手持ち資金の事前確保
e.通信手段・各種インフラの代替方針
中核事業の継続に電話や電力、ガス、水道等が必要な場合には、可能な限りの代替策を検討しておく必要がある。
f.情報のバックアップ方針
中核事業の継続に必要な情報は、電子データ、紙データに関わらず複製を作成し、同じ災害で被災しない場所に保存しておくことが重要となる。
また、中核事業を支える特別な情報システムがある場合は、バックアップシステムの整備も必要となる。
情報のバックアップ実施におけるポイントとしては、以下のものがある。
| ・ | 重要業務に必須となる情報は何かを把握する |
| ・ | 電子・紙データの複製の保管場所を決定する |
| ・ | 情報のバックアップを取る頻度等を決定する |
| ・ | 非常用電源や回線等の二重化対策を検討し、必要であれば導入する |
これまでの分析で得られた結果に基づき、目標復旧時間内に事業を復旧できるようにするための事前対策を検討する。
②BCPの準備、事前対策を検討する
A.このステップの目的
BCP(事業継続計画)は、緊急事態発生時においても中核事業を継続、または早期復旧させるためのもの。
しかし、本来ならば、会社の従業員、事務所や工場、または中核事業に必要な設備等が被災しないことが望ましいことはいうまでもない。
このステップでは、これまでの分析で得られた結果に基づき、目標復旧時間内に事業を復旧できるようにするための事前対策を検討していく。
B.実施のポイント
BCPにおいて事前に対策を実施する理由は、会社が被災した場合に、中核事業の目標復旧時間内での復旧を達成させるためである。
そのためには、中核事業のボトルネックである資源(人、物、金、情報等)を災害の影響から保護する、または、代替の準備をするといった対策が必要となってくる。
そのため結果的には、これまでの検討で把握された中核事業のすべてのボトルネックについて、何らかの対策を取ることが必要になる。
なお、事前対策は、「ソフトウェア対策」と「ハードウェア対策」の2つに大別できる。
一般的には、ソフトウェア対策には従業員の労力、ハードウェア対策には導入資金がもっとも必要とされるが、会社には投入できる人員や予算上の限度があるから、すべてのボトルネックを解消するための対策を一度に実施することは、現実的に考えても難しいで。
そのため、まずは、ハードウェア対策と比べて費用面での負担が少ないソフトウェア対策を確実に実施し、多額の費用が発生すると見積もられるハードウェア対策については、本業での利益が出たら、それを少しずつ対策に投資するようにして、数年間程度を目処にすべてのボトルネック対策完了を目指すほうが、無理が少なく済むかもしれない。
そのためには、指針で示しているBCPサイクルを運用するにあたり、2回目以降のサイクルで実施することになる。
ただしその場合には、「どのボトルネック対策から実施していくべきか?」という優先順位付けの判断が必要である。
その際の判断基準として、「事業を理解する」で整理した、以下の視点が有効。
a.中核事業が影響を受ける可能性が高いと思われる災害
b.想定した災害により影響を受ける中核事業上のボトルネック
これらの視点に基づき、対策の優先順位を決めたら、順次、対策の実施に取りかかる。
また、事業所建屋の耐震化や防災に資する設備導入等、事前のハードウェア対策のための融資制度が、中小企業庁等により検討されている。
このような制度においては、BCP策定済みの中小企業に対する利率優遇措置も検討されているので、このような各種の融資制度があることを把握し、情報収集に努めることも、事業継続活動として重要といえる。(中小企業向けの災害対策支援制度については、資料09が参考にできる。)
【事前対策の検討にあたって】
指針「 事前対策メニュー一覧」に、一般的な対策項目と、それに要する費用の目安が示されているので、事前の対策を検討にあたっては、そちらを利用することができる。
3-3 BCPを策定する
(1) このプロセスの目的
緊急事態発生時においても、会社の経営を継続させる必要がある。
そのためには、限られた資源を最大限に利用して、まずは会社の中核事業から優先的に対応し、目標復旧時間内に復旧させていくという手順を踏むのがBCPの基本的な考え方。
緊急事態発生時において、中核事業を目標復旧時間内に回復させるための手順を示すものが、BCP(事業継続計画)。
このプロセスでは、基本的なBCPの策定と、それを、いつ、どのような体制で利用するかについて事前に整理することを目的としている。
(2) このプロセスでの実施内容
①BCP発動基準を明確にする
②BCP発動時の体制を明確にする
③事業継続に関連する情報の整理と文書化をする
①BCP発動基準を明確にする
A.このステップの目的
あなたの会社に発生した緊急時において、策定したBCPを有効に機能させるためには、BCPの発動基準を明確にしておくことが大変重要。
発動されたか、されていないのかよくわからないような状況では、各従業員はどのように対応すべきかの判断が付かなくなる。
その結果、所定の対応を迅速に実行することができず、最悪の場合、目標復旧時間内に中核事業を復旧させられない結果となることも考えられる。
このプロセスでは、「どのような場合にBCPを発動するか?」という基準を事前に明確化しておくことを目的としている。
B.実施のポイント
BCPの発動基準を設定するにあたってのポイントは、あなたの会社の中核事業のボトルネックが何らかの影響を受け、かつ、それに対して早期の対応をしなければ、目標復旧時間内に中核事業を復旧させることができない場合を正しく把握する必要があるということ。
そのため、「3.1 事業を理解する」のプロセスで把握した、中核事業のボトルネックと、そのボトルネックに影響を与える可能性のある災害の結果を利用して、災害とその規模、被災しているボトルネックの種類にもとづいて、BCP発動基準を定めることが望ましい。
②BCP発動時の体制を明確にする
A.このステップの目的
ここでの目的は、緊急事態が発生した場合におけるBCP発動後の対応体制を明確にしておくこと。
B.実施のポイント
緊急事態発生時には、全体のリーダーである経営者によるトップダウンの指揮命令によって従業員を先導することが重要。
経営者は、指揮命令と情報の管理に注力することになる。
また、BCP発動後から事業復旧を完遂するまでの間には、例として以下の機能をもった組織体制が望まれる。
・ 復旧対応機能 ...施設や設備の復旧等、社内における復旧対応
・ 外部対応機能 ...取引先や協力会社、組合や商工会との連絡や各種調整
・ 財務管理機能 ...事業復旧のための資金調達や各種決済
・ 後方支援機能 ...従業員の参集管理や食料手配、負傷した従業員の対応等
これらの機能ごとにチームを構成し、チームリーダーへの指揮命令をリーダー(社長等)が行い、チーム内の指揮命令はチームリーダーが行うという体制が望まれる。
また、このようなトップダウンの体制を有効に機能させるためには、リーダーとなる人物と普段より意思疎通を多くとっている、いわゆる「社長の右腕」のような従業員がサブリーダーになることがポイントである。
このような従業員を、事前に想定しておくことが望ましい。
なお、各チームの人数をそれぞれ同程度の人数にする必要はまったくない。
そのチームの役割に必要な人数をそれぞれ割り振ればよい。
また、以下のような場合においての体制づくりの考え方も示しておく。
a.比較的従業員が多く、各チームが数十名規模になる場合
このような場合、チームをさらにいくつかのサブチーム(数人規模)に分割し、各サブチームにもリーダーを立てることが望まれる。
サブチームのリーダーへの命令は、当該チームのリーダーが実施することになる。
b.各チームが1~2名程度しかいない場合
このような場合、全体のリーダーがチームリーダーも兼ねることになる。
またはサブリーダーを選出した上で、その人とチームリーダーの役割を分け合う等の対応が考えられる。
③事業継続に関連する情報の整理と文書化をする
A.このステップの目的
緊急事態発生時の事業継続において必要となる情報を、BCPとして事前に整理しておくことは、その目的のためには非常に有効。
ここでは、それらの情報を整理し、付属の帳票フォーマットに記入することにより、BCPの文書化を実施する。
B.実施のポイント
ここで策定するBCPは、大きく分けて次の2つの要素からなる。
| a. | BCP(事業継続計画)の発動フロー |
| b. | 事業継続に必要な各種情報の帳票類 |
a.「BCP(事業継続計画)の発動フロー」について
BCP発動条件が満たされるような緊急事態が発生すると、「二次災害の防止」や「被災状況の把握」といった初動対応を手始めに、BCPにもとづいた事業継続対応を実施していく。
ここでは、初動対応から事業復旧にいたるまでの基本的な対応手順のひな形となる「BCP(事業継続計画)の発動フロー」が添付されているので、BCP策定の第一段階としては、これを利用。
会社の特性や、目標として掲げた中核事業の復旧時間などの制約により、このフローの一部、または全体を調整する必要も出てくると思われるので、その点は柔軟に考え、企業にフィットしたBCPの策定を行う。
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_b/bcpgl_04_1.html
b.「事業継続に必要な各種情報の帳票類」について
このステップでは、a.の「BCP(事業継続計画)の発動フロー」に示される手順ごとに、必要となる情報を整理し、文書化を行う。
ここでは、情報を整理する帳票のひな形となる様式集を添付されているので、BCP策定の第一段階としては、この様式を利用して情報を整理できる。
http://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_b/bcpgl_03b_3_3_2.html
3-4 BCP文化を定着させる
(1) このプロセスの目的
会社へのBCPの定着という意味では、ただBCPを策定していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従業員が有効に活用できなければ意味がない。
BCPを実効性の高いものにしようとするならば、災害時にBCPを利用して実際に復旧活動にあたる従業員が、BCP運用に対して前向きに取り組む必要があることはいうまでもない。
そのためには、BCPに関する訓練や教育が積極的に行われるとともに、BCP運用に対する経営者の前向きな姿勢が、会社の文化として定着することが重要になってくる。
指針では、そのような文化のことを「BCP文化」と表されている。
BCP文化が定着している状態がどのようなものであるかを明確に規定することはできないが、例えば従業員に関する以下のような質問すべてに対して、自信をもって「はい」と回答できるようになることが、このプロセスの目的といえます。
| ・ | BCP活動を実施することに従業員が賛同していますか? |
| ・ | 緊急事態発生時に出社可能な従業員が出社してくれますか? |
| ・ | 緊急事態発生時に何を行うべきかを各従業員が理解していますか? |
| ・ | 緊急事態発生時に従業員が安否を報告してくれますか? |
| ・ | 従業員が、自身や家族の安全対策に積極的に努めていますか? |
(2) このプロセスでの実施内容
①従業員へのBCP教育を実施する
②BCP訓練を実施する
③BCP文化を醸成する
①従業員へのBCP教育を実施する
A.このステップの目的
BCPの運用は継続的な活動であり、会社が存続する限り、維持・更新とそれにもとづく教育や研修は継続的に実施していくことが必要。
そのためには、従業員に対するBCP教育を通してBCPを会社に定着させることが重要となってくる。
また、BCP教育は、継続的に実施されることが非常に重要。
B.実施のポイント
従業員に対して行うべきBCP教育の内容は、大きく分けて2つある。
以下に、具体的な実施内容例とともに示している。
a.従業員にBCPを受け入れてもらう
・ BCPや防災に関する社内ディスカッション
対策に関して従業員と議論したり、災害記事について話し合ったりすることにより、従業員の防災に対して意識づける。
・ BCPや防災に関する勉強会
同業組合や商工会等で勉強会を開催する等の取組みが望まれる。このような活動は災害時における地域企業同士の協力体制強化にも有効である。
b.防災や災害時対応に関する知識や技能を従業員に身に付けてもらう
・ 心肺蘇生法等の応急救護の受講支援
地元消防署等では、定期的に心肺蘇生法のような応急救護の講習が開催されていることがあるので、そのような掲示や広報を見かけたら、従業員に紹介して受講を促す等、参加への積極的な支援が望まれる。
・ BCPや防災対策関連のセミナーへの参加支援
各地の商工会議所等が、企業のBCPや防災対策に関連するセミナーや講習を開催していることがあるので、従業員に対して積極的な参加を促すことが望まれる。
②BCP訓練を実施する
A.このステップの目的
緊急事態発生時にBCPが有効に活用されるためには、ただBCPを策定しただけでは不十分であり、日頃からの従業員へのBCP教育と併せて、定期的な訓練の実施が不可欠。
訓練の目的としては、主に以下のものがあげられる。
- ・ 策定したBCPの実効性を評価すること
- ・ 各従業員のBCPに対する理解を深め、その活動に対して積極的に取り組むとともに、緊急事態発生時での各自の役割を明確に認識させること
- ・ 訓練によって計画を実際に行ってみることにより、BCPの不備や欠陥等の改正すべき点を明らかにして、それらを改訂すること
- ・ 従業員間での連携・協力を促すこと 等
- B.実施のポイント
- BCP訓練を無理なく実行するとともに、あなたの会社にBCPを定着させていくためには、BCP全体を通した訓練を初めから無理に行おうとするのではなく、現在実施している防災訓練に事業継続に資する要素を追加したり、BCP発動手順の一部分を採り上げた訓練(要素訓練)を実施したりすることにより、従業員に着実に習得させていくことが望ましい。
- 訓練には様々なレベルや種類があるが、以下に、簡便かつ所要時間が少ないと考えられる順に、訓練項目を例示。
- ・ 机上訓練
- 策定したBCPの手順に従って、議論形式でメンバーごとの役割を確認し、実際に活動できるかどうかを検討するもの
- ・ 電話連絡網・緊急時通報診断
- 緊急事態発生後、速やかに従業員に連絡が行き渡るかどうかを確認するもの
・ 代替施設への移動訓練
バックアップの工場や事業所を準備している場合は、復旧要員の一部を実際に移動させ、その場所で事業を復旧させる計画を予行演習するもの
・ バックアップしているデータを取り出す訓練
緊急時におけるBCP発動を想定して、バックアップしている電子データや書類を利用できるように、バックアップ場所から取り出す訓練(情報システムを利用している場合は、代替システムを準備し、問題なく起動させられるかどうかを試す訓練を含めることが望ましい)
・ BCP全体を通して行う訓練(総合訓練)
また、社内訓練でなくとも、各自治体が主催する防災訓練も行われている。このような訓練に参加することは、社内の防災能力を高めるだけでなく、自治体と会社間、または、近隣の会社同士の連携や協力を高めることにもつながる。
地域間での連携や協力体制は、災害発生時においての、会社の事業継続に対して、大変有効な要素となるから、このような訓練にも積極的に参加することが望まれる。(BCPに関する教育や訓練については、資料15が参考にできる。)
③BCP文化を醸成する
A.このステップの目的
会社全体におけるBCP文化の定着という意味では、BCPに関する訓練や教育をただ実施していればよいということではなく、緊急事態発生時にそれを従業員が有効に活用できなければ、BCPの効果を十分に発揮させられない。
BCPを実効性の高いものにしようとするならば、平常時から一人ひとりの従業員がBCPに関する活動に対して前向きに取組むとともに、BCPに対する理解を深め、自身の役割を明確に認識することが不可欠。
一方、経営者は、全社をあげてBCPに取組むという姿勢を見せ、BCPの推進をアピールすることが望まれる。
このような活動が日常においても自然に実現されるようなBCP文化の醸成が、このプロセスの目的である。
B.実施のポイント
「BCP文化の醸成」と一言でいっても、それが一朝一夕にできあがるほど容易ではないこと。
そのため、このプロセスの実現には、長期的な視点で経営者と従業員の意識を高めていくことが望まれる。
会社へのBCP文化醸成を進めるにあたり、経営者及び従業員それぞれが常に意識しておくべきポイントは以下の通り。
★ 経営者が意識しなければならないこと
もし、何らかの緊急事態が発生しても、あなたの会社が生き続けるためには、従業員の協力を得てBCPを完遂させる必要がある。
そのためには、日常より従業員一人ひとりにBCPに対する経営者の熱意と行動を従業員に理解してもらうとともに、従業員の安全や雇用を死守するという姿勢を見せることが必要。
そうしなければ、緊急時においても従業員の最大限の協力を得られない。
★ 従業員が意識しなければならないこと
もし、会社に何らかの緊急事態が発生しても、従業員の安全や雇用が守られるためには、日常からの対策活動や、緊急時におけるBCPの完遂が不可欠である。
ただし、経営者だけの力では、緊急時に中核事業を継続させることは非常に困難なので、日常より、従業員一人ひとりが経営者のBCPに対する熱意と行動を理解し、BCPの運用に積極的に協力する必要がある。
また、BCP運用に対する従業員の認識を促進させるためには、BCPや防災に関する情報の社内への発信等を、平時より継続的に実施する必要がある。
このような活動に対して従業員から深い理解を得られるためには、従業員だけでなく、取引先や協力会社、ひいては地域社会を災害による被害や経済的損失から守るという経営者の意志を明確に示す必要がある。
経営者が平時から実施しておくべき対応の例は以下の通り。
・ 従業員との平時からのコミュニケーション
BCP活動に関する内容も含め、従業員との対話は不可欠。
・ 従業員のための安全対策の実施
BCPに対する経営者の意志を示すための手段の一つとして、目に見える対策を従業員に提供することは効果的。例えば、社宅の耐震化や地震保険への加入、家庭用防災用具の配布等。
・ 取引先や協力会社、地域を大切にした事業の実践
万が一、会社が被災した場合にも、取引先や協力会社等に迷惑をかけず、地域の復興に貢献するという経営者の意志を従業員に示すことも必要。これは日常の様々な活動を通して実現される部分も大きいため、日ごろから留意しておくことが重要。
・その他、BCPや防災に関する各種活動の支援
例えば、平常時の職場において、BCPに関する標語をカードにして従業員のデスクに貼り付けるといった活動も、従業員啓発のための活動といえる。
3-5 BCPの診断、維持・更新を行う
(1) このプロセスの目的
「いざ、BCPを発動してみたものの、整理されている情報が古くなっており、役に立たなかった!」ということでは、せっかくBCPを構築しても意味がない。
このような事態に陥らないためには、BCPがあなたの会社の中核事業の復旧継続に本当に有効かどうかを診断及びチェックするとともに、会社に関する情報を、極力、最新の状態に維持しておく必要がある。
また、必要に応じてBCPの運用体制の見直しや運用資金(事前対策費用等)の確保を行う。
BCP運用は継続的な活動であり、それに終わりはない。
会社が存続する限り、BCPに関するこれらの活動は、定期的かつ確実に実施することが望まれる。
(2) このプロセスにおける実施内容
①BCPの診断・チェックを行う
②BCPの維持・更新を行う
①BCPの診断・チェックを行う
A.このステップの目的
このステップでは、これまで策定したBCPの正確性や完全性を評価することを目的として、BCPの全体の実効度の診断及びチェックを実施する。
このステップを通して見直すべき改善点を洗い出し、BCPに対する取組み全体を評価して、定期的にBCPの更新を行うことは経営者の責務となる。
B.実施のポイント
策定したBCPが緊急時に有効に機能するかどうかを評価する方法としては、大きく分けて以下の2つ。
a.緊急事態発生を模擬したBCP診断を実施して評価する
BCPの診断として最も効果的なものは、抜き打ちで、実際に中核事業が影響を受けたという状況を模擬し、従業員の安否確認、参集、代替施設への移動、代替設備の準備、バックアップしてある情報類の取り出し等の活動(または、その手続き)が、BCPにもとづいて適切に実行されるかどうかを実際に評価してみること。
このような本格的な診断の実施は、従業員の負荷や通常業務への支障等の面から考えると、敷居の高いものといわざるをえないが、実際に行動してみなければ明らかにできないようなBCPの問題点や課題等が把握できるので、余力がある場合には実施することが望まれる。
b.自己診断チェックリストを利用して評価する
『BCP策定・運用状況の自己診断チェックリスト』を利用して、会社における現状のBCPを評価する方法。
緊急事態発生を模擬して実際にBCPを発動させる評価方法と比べると、負担はほとんどなく、手軽に評価できるメリットがあるが、策定したBCPの詳細な問題点までは把握できない。
②BCPの維持・更新を行う
A.このステップの目的
BCPを実効性の高いものにするためには、会社の最新の状況を反映したものに維持するとともに、BCPに変更を与えるような社内体制の変更等があった場合に、BCPを見直し、更新する必要がある。
必要に応じてBCP運用体制を見直すとともに、事前対策等に必要な運用資金を見積もり確保する。
また、見直し結果を踏まえて改善点を洗い出し、BCPに対する取組み全体を評価して、次年度の改善提案につなげる。
B.実施のポイント
BCPは継続的に更新されることが望まれるが、定期的な更新を行うべき頻度や、行うべき条件は、会社の特性や規模等によって変わる。
BCPの更新は以下のような条件にもとづいて実施されるべきだが、このような大きな事業変化がない場合でも1年ごとの見直しが望まれる。
| ・ | あなたの会社の組織体制に大きな変更があった場合 |
| ・ | 取引先(供給元または納品先)に大きな変更があった場合 |
| ・ | あなたの会社の中核事業に変更があった場合 |
| ・ | 新しい事業ライン、製品、またはサービスを開発した場合 |
| ・ | 主要な情報通信システム、ネットワークに大幅な変更があった場合 |
| ・ | あなたの会社の業務に関連する、国や業界のガイドラインが改訂された場合 |
| ・ | サプライチェーンからの要求に変更があった場合 等 |
ただし、従業員の連絡先の変更等安否確認に関するものは即時に更新されることが望まれる。
そのため、従業員の連絡先が変更になった場合に、それを会社に申し出るための手順が、従業員に対して明確にされている必要がある。
※ BCP更新の頻度を決定したら、〔様式02〕BCPの基本方針に記入する。
また、構築したBCPの水準が、その目的と照らし合わせて、確実かつ有効なものであるかどうかを調査するために、BCPコンサルタント等の第三者による審査を受ける方法がある。
外部による審査により実効性を保証されたBCPを持つことは、会社の事業継続可能性を社会に証明するための根拠となるが、一般的に、BCP構築を開始したばかりで、まずはそれを会社に定着させるための活動をしている段階の会社においては、外部審査のプロセスをBCPに組み込むケースは多くないようである。
BCPが会社に定着し、BCPがある程度運用できるようになった上で、必要性を感じるのであれば、経営者の判断により、改めて審査プロセスを会社のBCPに取り込むかどうかについて検討すればよい。
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